[対談・座談会]

2016年4月号 258号

(2016/03/15)

[座談会]現場から見たASEANのM&A成功の条件

 梅津 英明(森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士)
 小黒 健三(やまと監査法人 パートナー、アクセルパートナーズ 取締役 公認会計士)
 塚本 信三(昭和電工 戦略企画部 グローバルビジネスプロジェクトリーダー)
 (50音順)
 (司会・構成)丹羽 昇一(編集長)
  • A,B,EXコース

左から梅津 英明氏、小黒 健三氏、 塚本 信三氏

<目次>

自己紹介

丹羽 「チャイナプラスワンといわれて久しいわけですが、その候補先としてのASEAN諸国の重要性はますます高まりを見せ、ASEANへの投資・M&Aは高水準を続けています。しかし、新興国向けM&Aは容易ではなく、ポストM&Aにおける経営に苦慮するケースも少なくありません。特に、対象は中堅・中小企業となりやすく、大企業とは違った難しさもあります。また、ASEAN経済共同体がスタートし、TPPが調印されましたが、他方で、中国経済の減速や原油価格の下落、米国利上げなどの影響も懸念されます。そうした中、経営戦略上避けて通れないASEAN諸国のM&Aをいかに成功させるか。本日は、特に中堅・中小企業のM&Aを念頭に、陥りやすい失敗を踏まえて、成功のポイントについて、経験豊かな実務家の方々に語っていただきたいと思います。

  まず、梅津先生から自己紹介をお願いします」

梅津 「森・濱田松本法律事務所の弁護士の梅津英明と申します。M&Aを中心にやってきましたが、ここ数年はベトナム・インドネシア・タイ・フィリピン等のASEAN諸国に加え、ブラジル・メキシコを含む中南米地域、あるいはトルコやアフリカなどの案件が非常に多く、ずっと新興国のM&Aに携わっています。新興国に関しては、シンガポールや中国からのインバウンドもありますが、日本企業のアウトバウンドのM&Aがほとんどです。ただ直近は、グローバルコンプライアンスに関する仕事の割合が増えています。DD(デューデリジェンス)で賄賂が見つかったとか、買収後に会社の不祥事が発覚して事後対応するといったケースですね。今日はそのあたりも踏まえてお話ししたいと思います

小黒 「小黒健三と申します。公認会計士として、一貫して海外が絡む財務調査、監査、M&Aの支援などを専門にしています。3年前にPwC(プライスウォーターハウスクーパース)から独立し、現在は、やまと監査法人の代表社員としての仕事が1/3、 M&Aアドバイザー会社のアクセルパートナーズでの財務DDなどが1/3、JETROのアドバイザーも含め個人でのコンサルが1/3という感じでやっています

  大学卒業後、旭硝子で工場経理を経験させてもらった後、外部から会社を助ける専門家になりたいと思い公認会計士の資格を取りました。青山監査法人で監査を3~4年経験した後、2000年の旧中央青山監査法人の合併と同時にM&A支援の世界に入りました。当時、M&Aは新しい分野だったからです。私には新しもの好きの性格があるのかも知れません。国内M&Aにも慣れてきた2004年、PwC中国M&A部の先任者からお誘いがあり、これはおもしろそうだと上海に行かせてもらいました。3年半の中国駐在を経て、2008年の帰国後は中国に限らず、アジアを中心に、クロスボーダー案件(IN-OUT、OUT-IN)を集中的にやってきました。私がアジアに取り組み始めた2004年頃は、アジアのM&Aの草創期でした。そのころからの経験が私の財産になっています。M&Aフォーラム主催の『M&A実践実務講座』で丹羽さんと一緒に、長年講師を務めていますが、ずっとアジアのM&A実務の講座を担当しています

塚本 「昭和電工の戦略企画部グローバルビジネスプロジェクトリーダーの塚本信三です。新卒で三井化学に入りまして、石油化学原料等の需給調整や、工場の競争力強化(コストダウン)に向けた特命プロジェクトなどの仕事をやっていました。その頃、三井化学は海外との合弁会社がたくさんあることもあって、そういう会社のマネジメントをしたいなと思っていまして、自費でフランスのMBAを取得しました。その後日本総研に移り、それ以来13年間、再生・M&Aのコンサルティングの世界にいたことになります。日本総研では、産業再生機構関連など、再生案件の仕事が多かったのですが、その後移ったPwCでは、海外M&Aにおける事業面の調査や買収サポートなどを中心に行っていました。この分野はビジネスDDとも言いますが、日本企業のアジアへのアウトバウンド案件が多かったですね。

  3年前に事業会社に移り、現在は昭和電工の戦略企画部で、海外事業展開を加速するために各事業部が行うマーケティングや提携を支援する仕事に加え、新規領域のM&Aを企画部門の立場から積極的に企画、実行しています」

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