[視点]

2018年10月号 288号

(2018/09/18)

M&A実務担当者養成の必要性

龍野 滋幹(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士)
  • A,B,EXコース
 近年、日本企業が行うM&Aの件数は、国内景気の順調な推移に加えて、事業の集中と選択の概念が根付いてきていることもあり、また海外への進出に関しては、国内市場の縮小、国内外の労働コストの差などの要因もあいまって、海外案件、国内案件ともに大幅な伸びを見せており、企業のM&Aによる事業成長への意欲は増している一方のように思われる。
 他方、M&Aの現場にいると、M&A案件をハンドルできる社内人材の不足を訴えるクライアントの声は大きい。M&Aの実務では、バリュエーション、各種デュー・ディリジェンス、M&A契約の交渉などの各場面において、それぞれ専門家であるアドバイザーが付き、また、まとめ役としてのフィナンシャル・アドバイザーも存在するわけであるが、M&Aは会社自身のために行われるものであるから、各アドバイザーのアドバイスを踏まえつつも最終的な判断は会社によって行われるべきものである。その大局的な部分での判断は経営陣によって行われるであろうが、経営陣に対して最終判断を求めるまでの案件のハンドリング・交渉・判断は現場によって行われるべきものであり、M&A案件に対する理解・経験が十分でないと、専門家からのアドバイスをうまく活用することもできないことになりかねないため、M&A案件をハンドルできる社内人材の充実は、各社喫緊の課題となっている。


M&A専任部署の設置・人員の構成

 まず、M&Aに関連する社内部署としては、法務、財務、人事などの各専門部署や当該事業の担当部署が挙げられるが、その他にM&A案件においては、それら各部署を統括して案件の遂行に当たるべきM&Aの専任部署を置くべきか、会社によって対応が分かれるところである。「M&A推進室」のようにその名称にM&Aを冠したものであるかは別として、会社の事業戦略上M&Aに重点的な役割を期待する以上、M&Aをいかに行っていくかを継続的・計画的に考え実行していく部署はあることが望ましいであろうし、実際に具体的案件を遂行していくうえでも司令塔たる部署があることによって、案件における各部署の役割分担が明確になり、役割の重複であったり「お見合い」のような事態が起こったりすることを避けられる場合は多いように思われる(それは「社長室」であったり「経営企画部」であったりする場合もあろう。)。
 次に、M&A担当部署にどのような人材を配置すべきかが検討のポイントとなる。最近では、

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