[M&A戦略と会計・税務・財務]

2018年5月号 283号

(2018/04/16)

「生産性革命」実現のための特別措置について

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
  • A,B,EXコース
1. はじめに
 2018年3月28日、平成30年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法等の一部を改正する法律案」)が国会で可決・決定された。 平成30年度税制改正には、「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日に閣議決定)が目標として掲げた「生産性革命」実現のための税制の特別措置が盛り込まれており、それらの関連法案(「生産性向上特別措置法案」及び「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」)は、まだ国会で審議中である(2018年4月2日現在)。

 本稿では、「生産性向上特別措置法案」及び「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」で明らかにされた、税務上の特別措置の適用要件及び申請手続き等について解説を行う。


2. 関連法案の措置の概要
 「新しい経済政策パッケージ」では、2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、大胆な税制、予算、規制改革等の施策を総動員するとし、これを受けて、生産性向上特別措置法案で、我が国産業の生産性を短期間に向上させるために必要な支援措置を講じ、産業の発展を持続させるべく、企業の経営基盤を強化するため、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案により、必要な支援措置を講じるとしたものである(図表1参照)。 そしてこの立法化の背景にあるのは、言うまでもなく、IoTやビッグデータ・人工知能など、IT分野における急速な技術革新の進展により、世界的に破壊的イノベーションが進行する中での、我が国のイノベーション力の地位の低下の顕在化と危機感の高まりであり、イノベーション促進基盤の抜本的強化への国を挙げての強いコミットメントと言える。



 生産性向上特別措置法案における措置は、①プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設(参加者や期間を限定すること等により、既存の規制にとらわれることなく新しい技術等の実証を行うことができる環境を整備し、迅速な実証を及び規制改革につながるデータの収集を可能とする)、②データの共有・連携のためのIoT投資の減税等(データの共有・連携を行う取組を認定する制度を創設し、こうした取組に用いる設備等への投資に対する減税措置等を創設、事業者が国や独立行政法人等に対しデータ提供を要請できる手続きを創設)、③中小企業の生産性向上のための設備投資の促進(中小企業者が、市町村の認定を受けた導入計画に基づいて先端設備等を導入する際に支援措置を講じ、地域の自主性のもとで、生産性向上のための設備投資を加速)、の3点であり、平成30年度税制改正による投資減税措置が織り込まれているのは②と③の設備投資である。

 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案における措置は、①会社法の特例措置等の整備(株式を対価とするM&Aによる事業再編を、会社法の特例として認定、その他の組織再編における会社法の要件の緩和等)、②技術等の情報の管理措置に係る認証(情報の漏えい防止措置に係る認証機関の認定制度の創設)、③産業革新機構の組織・運営の見直し(投資機能の強化等のため、「投資基準」の策定や事後評価の徹底等)、④中小企業等経営強化法等の改正であり、平成30年度税制改正による組織再編関連の措置が織り込まれているのは①の株対価M&Aの創設である。

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