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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2018年6月号 284号

(2018/05/17)

第132回 機動的な組織再編を可能とする税制改正と実務上の影響について

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
1. はじめに
 第4次産業革命の進展とSociety 5.0の実現を見据えたアベノミクスの成長戦略(「未来投資戦略2017―Society 5.0の実現に向けた改革―」(2017年6月9日閣議決定))において、今後の取組の方向性として、「戦略分野」への選択と集中、価値の源泉の創出に向けた共通基盤の強化、「実証による政策形成」、Society 5.0時代の産業構造に向けた新陳代謝システムの構築、地域経済好循環システムの構築、の5つが掲げられている。 このうち、Society 5.0時代の産業構造に向けた新陳代謝システムの構築のための施策として、コーポレートガバナンス改革を形式から実質に深化させ、果断な経営判断の障害とならないような迅速かつ柔軟な事業再編を可能とする制度整備と事業再編の円滑化が挙げられている。

 欧米企業が大胆な組織再編により企業価値の向上を進めていく一方で、わが国の企業においては、大胆な経営判断が必ずしも十分になされておらず、事業ポートフォリオの機動的な見直しや、経営資源を成長性・収益性の見込める事業に振り向けていくための取組が進んでいないことが指摘されてきた。平成29年度の税制改正では、事業ポートフォリオの迅速な転換など大胆な事業再編を促進するための税制が整備され、平成30年度税制改正でも、更なる対応が講じられている。 本稿では機動的な組織再編を可能とする税制改正の概要と実務上の留意点について解説を行う。

2. 平成29年度税制改正後の組織再編税制と適格要件
 平成29年度税制改正により、スピンオフ(特定の事業部門や完全子会社を切り出して資本関係の無い別会社とし、経営を独立させる)税制が創設され、スクイーズ・アウトがその手法を問わず組織再編税制として整備された(改正により、全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求による完全子法人化も組織再編税制に含まれることとなった)ことにより、事業や法人のグループ内への取り込みとグループ外への分離のいずれについても、税制適格要件を満たす場合には非課税(再編法人及び株主における課税の繰延べ)とされ、機動的な組織再編が可能となった(図表1参照)。

組織再編税制と適格用件

 M&Aは我が国の企業でも活発に行われているが、事業分離に関しては経営判断の遅れで収益性が低い事業を抱え込み続ける結果、法人全体の事業価値を引き下げている状況が、少なくないといわれてきた。 スピンオフ税制の創設は、そのような企業価値の改善を図るための、事業ポートフォリオの機動的な見直しを税制支援する趣旨から立法化されたものである。

 上記の他に、グループ企業間で行われる分割型分割に係る税制適格要件(支配関係の継続)や、共同で事業を行うための組織再編(合併、分割型分割、株式交換及び株式移転)に係る税制適格要件(株式継続保有要件)の見直し等も平成29年度税制改正で行われており、分割後の売却等も非課税で行うことが可能となった。

 平成30年度税制改正では、①平成29年度に導入されたスピンオフの前に行われる組織再編の適格要件を見直すことでスピンオフの円滑化への対応が図られ、②当初の組織再編成の後に100%グループ法人間で従業者又は事業の移転が見込まれている場合の(当初の組織再編の)適格要件見直すことでグループ内の機動的な組織再編を可能とする措置が取られており、③無対価組織再編(平成22年度税制改正で規定の明確化)の類型の追加および非適格となる無対価組織再編の取扱いの明確化等により、納税者の予測可能性を高める措置が図られている(図表2参照)。 

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