[M&A戦略と法務]

2008年12月号 170号

(2008/11/15)

金融危機と不動産流動化における参加者の倒産

TMI総合法律事務所弁護士 林  康司/弁護士 田中 美穂
  • A,B,EXコース

第一 はじめに

二○○七年初頭に米国でサブプライムローン問題が顕在化し始めて以降、我が国でも金融機関に信用収縮の傾向が見られるようになり、その傾向は一進一退を繰り返しながらもその後徐々に強まっていった。そして周知のとおり、本年九月に「リーマンショック」に代表される急激な金融危機が米国で発生し、これにより金融機関の信用収縮が世界的規模で一気に広がることとなった。この状況は現在においても根本的に変わっていない。我が国では、「不動産ミニバブル」と言われるほど、活発な不動産投資が二○○七年中頃まで続いていたが、金融機関の信用収縮に伴って甚大な影響を受けることとなった。すなわち、不動産ミニバブルにおいては不動産流動化の手法が広く用いられてきたが、米国金融危機の影響で金融機関に信用収縮が広まると、不動産業者等、不動産流動化スキームの参加者において物件取得対価の支払いや支払期限が到来する既存借入金の借換えのための資金計画に狂いが生じ、その結果破綻に至るという事態が頻出することとなった。不動産流動化は中核となるSPCの倒産隔離を図ることを大前提としているが、SPC自体の破綻と関係なく、SPC以外のスキーム参加者が倒産すればスキームが予定したどおりの機能を果たすことが難しくなり、その結果、資産流動化スキームは著しく不安定な状況に置かれることとなる。このような事態への対処は、倒産会社自身やスキームの他の参加者にとって重要であるだけでなく、倒産した不動産業者の資産や事業の譲受けやM&Aを検討する際にも重要な問題となる。そこで本稿では、不動産流動化に焦点を当てて、既存スキームにおける参加者が倒産した場合にどのような問題が生じるのか、それらの問題をどのように解決すべきかといった点について素描する。
 

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