[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2009年8月号 178号

(2009/07/15)

MBO後、豊田自動織機グループ会社として存在感を高めるワンビシアーカイブズ

編集委員・池田耕造
  • A,B,EXコース
ファンドの支援でMBO

情報総合マネジメント事業を展開するワンビシアーカイブズが豊田自動織機の子会社になったのは、二〇〇七年五月のことである。買収当時(〇六年三月期)の売上高約一六五億円が、〇九年三月期には約二三五億円と業績も二桁の伸びで成長してきた。
そのワンビシにとって大きな転機となったのは、〇三年三月のMBOである。(本誌二〇〇六年一〇月号参照)ワンビシは一九六六年に創業され、当初は文書保管倉庫業からスタート、企業の貴重な経営資源である「情報」の安全確保と管理の効率化をサービスとして提供する、国内初の「情報セキュリティ事業」を開始した。顧客のリスクマネジメントの一翼を担うために、情報の発生段階から保管、抹消までのライフサイクルすべてをカバーし、かつその媒体の形態を問わない、総合的な情報管理サービス体系を構築してきた。
現在ではデジタル情報を含む総合的な情報管理のアウトソーサーとして事業展開を行っており、金融機関、官公庁を中心とした四一〇〇社以上を顧客とするなど圧倒的地位を持つ業界のリーディングカンパニーの地位を確立している。このほか、グループ会社のワンビシ産業ではアメリカンファミリー生命保険会社(AFLAC)の保険代理店を中心に保険代理店事業を七四年から手掛け、AFLAC代理店としては国内トップクラスの地位にあった。ところが、両社は本業の業績面では安定していたものの、他事業に対する過大な投資・運用に伴って大きな借入負担を抱えていた。こうした事態を打開するため、決断されたのがMBOだった。
MBOは、東京海上キャピタルが運営する投資ファンドに加えて、このMBOのために新たに東京海上キャピタルが設立した専用ファンド「N e wWanbishi Partners投資事業有限責任組合」および野村プリンシパル・ファイナンスが出資した受皿会社を通じて行われた。受皿会社にはワンビシアーカイブズの現経営陣も出資、この新会社が銀行借入を含めて計五〇〇億円強を調達し、ワンビシグループ二社の負債を切り離して、社員とともに情報資産管理業と保険代理店事業の事業譲渡を受けるという形をとった。当時としては国内最大規模のMBOとして注目された案件である。

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