[対談・座談会]

2013年5月号 223号

(2013/04/15)

[座談会] 専門家が語る独占禁止法審査の実際

 石垣 浩晶(NERAエコノミックコンサルティング 東京事務所代表/ヴァイスプレジデント)
 中山 龍太郎(弁護士・ニューヨーク州弁護士 西村あさひ法律事務所 パートナー)
 服部 薫(弁護士 長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
  • A,B,EXコース

左から石垣 浩晶氏、服部 薫氏、中山 龍太郎氏
1.はじめに


(1)自己紹介

-- M&A実務において、独占禁止法審査への対応の重要性が高まりつつあります。生き残りをかけた国内統合や海外の大型M&Aの結果、特定の国・地域の特定事業分野でのシェアが高くなるような場合に、国内外の独禁法当局の審査をクリアできるかどうかが案件の成否を左右するからです。独禁法審査の実務も、2011年の審査手続の大幅な見直しによって大きく変化し、海外審査も大きな課題です。公取委の審査スタンスはどう変化したのか。審査実務のポイントは何か。海外審査にどう対応するのか。独禁法審査の最前線でご活躍の皆様に、現場の実際の姿を語っていただきたいと思います。
なお、中山先生には、本特集のために「わが国における企業結合審査の概要」をご寄稿頂いております。独禁法審査の基礎知識についてはそちらをご参照頂くということで進めさせていただきます。
それでは、独禁法とのかかわりも含め、自己紹介からお願いします。

服部 「1997年に弁護士登録をしましたが、当時、独占禁止法(独禁法)の仕事というと、そのメインは入札談合やそれに続く住民訴訟という国内案件で、企業結合案件もそれほど活発ではなかった(少しでもシェアが高いと事前検討であきらめていた)ような印象です。2002年に留学から戻ったのですが、企業においても、企業結合やカルテルといった問題を企業活動において無視できないという意味で独禁法に注意がむくようになったのはその頃からではないかと思います。今や、仕事のほぼ全てが独禁法関係です。たまたまとはたまたまとはいえ、大きく変化したこの10年に時期的に重なるという、めぐりあわせとなりました」

中山 「最近の企業結合案件としては、新日鉄・住金や東証・大証の案件でご一緒させていただきましたね」

石垣 「私は、立命館大学経済学部の助教授を03年に退職した後、任期付き職員として3年間、公取委の企業結合課でエコノミスト(企業結合調査官主査)として勤務しました。公取委では、様々な企業結合案件の審査や経済分析を行い、また、2004年度の『企業結合ガイドライン』の改正にもかかわりました。任期終了後は大学には戻らず、06年に現在のNERAエコノミックコンサルティングという主に訴訟・紛争・規制対応にかかわる経済分析を専門とするコンサルティング会社に入社し、現在は東京事務所の代表を務めています。独禁法分野としては、企業結合案件を中心として、カルテル・談合・私的独占など、様々な事件に対して経済分析を提供してきました。近年は、優越的地位濫用事件やカルテル事件を取り扱うことが増えています。取り扱う経済分析の範囲は、独禁法に限らず知財や証券・金融・エネルギーといった分野に多様化しています」

中山 「私は99年の弁護士登録です。元々M&Aが業務の中心で、当然、独禁法の企業結合審査も仕事の一部だったわけですが、1つの独立した業務分野という意識は強くなく、一部の事例を除くと、公取委の担当者とコミュニケーションをとって事務手続きをきちっとやっていくということだったかと思います。しかし、06年に留学から戻ってきた頃から、実務が変わってきたと感じました。まず実態面では、以前はシェアが40%を超えるような結合案件だと難しいと言われていましたが、シェアが40~50%を上回るような大型案件が珍しくなくなりました。これに合わせて、企業結合審査への対応も、いろいろなデータを集め、きちっとしたロジックをたててやるような時代になってきましたし、国際的な企業結合審査も含め、1つの大きな業務分野になってきたと思います。そういうこともあって、最近は独禁法絡みの仕事が増えてきていて、引き続きM&Aもまじめにやっているのですが、独禁法案件が業務の半分以上を占めることもままあります。独禁法は、非常に伸び盛りの分野で、かつ、実務的なノウハウが非常に大事です。文献に書かれていることで終わらないという意味で、非常にチャレンジングな分野だと思います」

(2)M&Aと独禁法 ~最近の実務の動向~
 

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