[ポストM&A戦略]

2013年8月号 226号

(2013/07/15)

第56回 クロージングに向けた経営チームのデザイン(下)

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル)
  • A,B,EXコース

  前回から、クロスボーダーM&Aの組織人事課題の中でも特に重要度の高い買収後のマネジメント体制、およびこれと対を成すガバナンス体制の構築について解説している。前回は①アセスメントインタビュー、②PtoP(Principal to Principal)ミーティング、そして③リテンションインタビューの3つのイベントを活用し、サイニング前からクロージング前までの期間でどのように買収先の経営チームをデザインし、マネジメント体制を確立するか説明した。
  今回は、そのマネジメント体制と一体となるガバナンス体制の確立のため、サイニング前からクロージング前までの期間で何を行い、どのようなガバナンス体制の確立を目指すのかを解説する。

ガバナンスにおける「重要な細部」への踏み込み

  ガバナンスの論点のひとつに「重要な細部」という概念がある。重要な細部であれば、マネジメント側、つまり買収先のCEOや経営チームに任せ切りにしないで、ガバナンス側からもその個別の細部に積極的に関与する必要性があるという問題提起である。
  もとより、ガバナンス側が何でもかんでもマネジメントの細部に踏み込もうとするのは、詳細の理解度や投入できるリソースからしてとても現実的でないし、もしも多大な努力によってこれをやり切るならば、マネジメントを二重に行うわけであるからとんでもなく非効率である。買収先マネジメントチームの士気も失われるであろう。
  しかし逆に、ガバナンス側がマネジメント側にすべてを任せ、その結果のみにおいて管理する、つまりうまくできればその貢献に報い、逆にうまくできなければ解任する、というのでは、マネジメント側から報告がされるまではガバナンス側は何も知らず、しかも知ったときにはそれはもう実行されているのであるから、これはこれで無駄が多いだけでなく、不適切な事態を収拾するために支払う直接間接の代償も多大なものとなる。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング