[ポストM&A戦略]

2014年2月特大号 232号

(2014/01/15)

第62回 経営者のKPIとインセンティブ(下)

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル)
  • A,B,EXコース

  前回は、経営者に対するインセンティブについて、基本的な事項も含めてその概念を解説した。今回はそれを受けて、海外企業を買収する日本企業にとって、買収後の経営者向け長期インセンティブをどのように設計したらよいのか、またそもそもどのような選択肢があるのか、日本企業の買収先として実際に買収件数において群を抜いており、長期インセンティブの種類も多様な米国を例にとって解説する。

長期インセンティブの目的(主として米国の状況)

  長期インセンティブ(LTI、Long Term Incentive)は、短期インセンティブ(STI、Short Term Incentive)と対をなす報酬制度である。STIが毎年の業績に報いる年次賞与であるのに対し、LTIは典型的には3年、時に4~5年程度の期間の成果に対して報いるものである。3年程度の期間であれば長期ではなく中期と呼ぶべきかもしれないが、英語では一貫してLTIと呼ばれている。
  LTI導入の目的は、米国では一般的に以下のように説明されている。なお、英語で従業員(employee)とは、経営者(executive)を含むすべての従業員のことである。

【会社にとっての目的】
・中長期の重要な経営目標の達成に対して、従業員を動機づける
・株主の経済的な得失(具体的には主に株価の変動)と従業員の得る報酬を紐づける
・複数年にわたる報酬を提供し、重要な従業員のリテンション(会社が望まない退職の抑制)を図る

【LTIの支給対象者にとっての目的】
・会社から、自分の業績・貢献についての適切な認知と報償を得る
・個人の資産形成を促進する
・会社に対するオーナーシップとコミットメントを形成・拡大する

【株主にとっての目的】
・株主の経済的な得失(具体的には主に株価の変動)と従業員の得る報酬を紐づける

・LTI支払いの前提条件として最低限の業績基準(閾値、Threshold)を設け、困難な経営状況に陥ったとしてもThresholdの業績達成を強く動機づける

 

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