[視点]

2014年7月号 237号

(2014/06/15)

対日直接投資は日本の経済成長をもたらすか?

 伊藤 恵子(専修大学経済学部 教授)
  • A,B,EXコース

<成長戦略における対日直接投資残高倍増目標>

  安倍政権は、2013年6月に閣議決定された『日本再興戦略-JAPAN is BACK-』を改訂した新たな成長戦略を、近く発表する(2014年6月に公表予定)。『日本再興戦略』の柱の一つが国際展開戦略で、対内投資促進やグローバル人材育成・活用についての目標が掲げられたが、新たに発表される成長戦略でも国際化は重要なキーワードであるに違いない。

  よく指摘されるように、日本の対内直接投資残高は対GDP比で3.5%(2012年末時点)と世界の主要国と比べて著しく低い(注1)。2002年時点の同比率(1.9%)からは上昇したものの、リーマンショック後は横ばいである。こうした状況において、『日本再興戦略』では、2020年に対内直接投資残高を35兆円(2012年末時点17.8兆円)に倍増という目標を掲げており、今後、税制改革や雇用改革、特区の活用、ジェトロを通じた情報発信などの具体策が打ち出されてくるものと思われる。

<対日直接投資は国内経済に正の効果をもたらすか>

  対内直接投資は、国内経済に正の波及効果をもたらすのだろうか。理論的には、いくつかのプラス効果が期待できる。優れた技術や経営ノウハウを持つ外国企業の参入は、外国資本比率の上昇した企業の生産性向上のみならず、他の国内企業へも技術・ノウハウがスピルオーバーすることによって、国内経済全体の生産性を押し上げる効果が期待される。マクロ・レベルでは、多くの国で対内投資と経済成長との間に正の関係がみられるし、東アジア諸国では、外国企業の積極的な誘致による輸出産業の育成が経済発展をもたらしたと評価されている。
  

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