[視点]

2014年8月号 238号

(2014/07/15)

企業再生M&A成功の鍵を握るスポンサー企業力

 芦澤 美智子(横浜市立大学 国際総合科学部 経営学コース 准教授)
  • A,B,EXコース

1. 企業再生M&Aに関する理解の深まり

  遡ること約15年、2000年ごろの日本では長引く不況の影響で業績不振に陥る企業が多く、それら企業の再生(再建)の担い手としてファンドと事業会社が存在感を増していた。この動きに伴い企業再生M&Aの件数も増えていった。

  背景として最も大きかったのは、バブル崩壊によって銀行の財務基盤が傷ついていたことである。戦後日本において、業績不振企業に対してはメインバンクが財務的に支援し、また役員、時には社長を派遣して銀行主導の企業再生を数多く行ってきた。しかしながら、バブル崩壊の影響で銀行が余力を失い、企業再生を担う別のプレイヤーが待たれていたのである。そのような環境下で、企業再生M&Aの土台を整備するため、組織再編関連と企業再生関連の法制度改正が相次いで行われた。

  さらに2003年に象徴的存在として産業再生機構が発足してカネボウやダイエーといったその時期を代表する業績不振企業の再生を手がけた。このことで、それまで「乗っ取り」というような否定的文脈でとらえられることが多かった企業再生M&Aが、業績不振に喘ぐ企業を救う肯定的な存在として一般に認知されるようになっていった。

  それから今日までに、日本において企業再生を担う専門家の層は厚みを増している。また実務家から多くの著書が出されて、企業再生M&Aに関する戦略・財務・法務・会計税務等の理解が深まっていった。
  

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング