[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2014年11月号 241号

(2014/10/15)

SBIモーゲージ―― カーライル・グループの支援で「総合金融ディストリビューター」を目指す

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長期固定住宅ローンの融資実行件数シェアでトップ

左から直海 知之氏、山田 和広氏  2014年8月、SBIホールディングス(SBIHD)の住宅ローン子会社で韓国証券市場(KOSPI市場)に上場しているSBIモーゲージ(SBIM)に対して、米大手投資ファンドのカーライル・グループが、非上場化に向けた公開買付け(TOB)を実施(買付総額約4186億ウォン:約419億円)した。

  SBIMは、01年5月に日本初のモーゲージバンク(証券化を資金調達手段とした住宅ローン貸出専門の金融機関)として事業を開始した。主力商品は全期間固定金利住宅ローン「フラット35」(後述)だが、同商品を取り扱う約330金融機関の中で、同社は融資実行件数のシェアで2010年度以降4年連続の第1位となっており、13年5月には住宅ローン累計実行金額が2兆円を突破するなど順調に業容を拡大してきた。また、12年4月には日本企業として初めて同社普通株式を原株とする韓国預託証券(KDR)をKOSPI市場に上場している。

  フラット35は、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫。07年4月1日に旧住宅金融公庫の業務を継承して住宅金融支援機構が発足)が03年に民間金融機関と提携して提供を始めた住宅ローン。固定金利型で返済期間が最長35年と長いのが特徴である。民間金融機関が貸し出した住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取った上で、それを担保にMBS(資産担保証券)を発行して機関投資家などに販売するという仕組み。新築住宅のほか、中古住宅の購入時にも利用できる。

  アベノミクスによるデフレ脱却への期待感から株高、円安が進む中で、長く続いた低金利時代が終わり長期金利が上昇するのではないかとの予測から消費者の間では住宅ローンの固定金利ニーズが高まってきている。そのため、全期間固定金利型住宅ローンであるフラット35にも注目が集まっている。

「今でこそさまざまな金融取引がインターネット上でなされていますが、我々が創業した01年当時は金融ビッグバンが起きた直後で、まだまだ金融の自由化が進んでおらず、インターネットチャネルも普及期という段階にありましたので、インターネットを活用した住宅ローンの貸出・取次という我々のビジネスモデルは思うように成長できずにいました。そんな中で、1つ転機となったのが住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)によるフラット35という商品の登場です。低金利固定で15年~35年という長期の住宅融資を受けることができるという商品で、このフラット35を利用することで、預金という住宅ローン貸し出しの原資となる資金を持たないモーゲージバンクも住宅ローンの取り扱いができるようになったのです。これによって多くのモーゲージバンクが立ち上がってきましたし、当社にとっても事業拡大の契機となったのです」

  こう語るのは、SBIMの直海知之(なおみ・ともゆき)社長。同氏は1978年12月生まれ。青山学院大学経営学部経営学科を卒業して2001年ソフトバンク・ファイナンス(現・ソフトバンクテレコム)入社。その後、テックタンク(現・SBIホールディングス)を経て04年SBIMに入り、09年取締役執行役員、14年3月社長に就任した。
 

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