[M&A戦略と法務]

2015年7月号 249号

(2015/06/15)

ベンチャー企業による資金調達

 保坂 雄(TMI総合法律事務所 弁護士)
 秋本 壮(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1. はじめに

  昨今の堅調な株価基調等に支えられ、事業会社によるM&Aや株式発行による資金調達活動が活発化している。このような状況は上場会社に限られた話ではなく、創業間もない会社やこれから株式上場(IPO)を目指す会社においても見受けられる。また、いわゆるリーマンショック以降しばらく低調であったIPO市場も近時は活況の様相を呈しており、昨年1年間では、78社(うち7社はテクニカル上場(注1))が東京証券取引所へのIPOを実現している。

  当職らは、これまで幸いにも、多くのいわゆる未上場のベンチャー企業による資金調達や(発行体側・主幹事証券側を問わず)IPO案件に携わる機会に恵まれてきた。これまでの経験上、投資を受ける側であるベンチャー企業において投資の受入れに慣れていないケースが多いように思われ、また、IPO審査の過程においても、ベンチャー企業やその大株主兼経営者が投資家との間で締結した投資契約や株主間契約の文言が問題となることがしばしば見受けられる。これらの要因については種々考えられるものの、投資を受ける際に締結される契約の内容自体が非常に難解であることにその一因があるように思われる。

  そこで、本稿では、議決権の3分の2超を保有するいわゆる大株主兼経営者(以下「オーナー経営者」という)が存在する未上場の株式会社(以下「発行体」という)が、新規に普通株式(注2)を発行することにより投資家から出資を受け、且つ、当該発行後においてもオーナー経営者の3分の2超の議決権が維持されるケース(以下「本件ケース」という)(注3)を念頭に、主として当該出資に関連して締結される契約のうち一見して理解が難しいと思われるものについて若干の考察を試みた上で、近時のベンチャー企業への投資案件におけるトレンドについても付言することとしたい。

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