[視点]

2015年7月号 249号

(2015/06/15)

会社はどこまで株主を選べるか?

 大崎 貞和(野村総合研究所 未来創発センター 主席研究員)
  • A,B,EXコース

  日本を代表する著名企業であるトヨタ自動車が、従来にないタイプの種類株式を発行する。来る6月に開催される定時株主総会における定款変更を経た上で、普通株式と同じ議決権を有するが、発行後概ね5年間は原則として売却できないという優先株式「AA型種類株式」を7月以降、5年間にわたってシリーズ化して発行するというのである。
  かつての日本の商法は、株主間の平等を徹底するといった観点から種類株式の発行を厳しく制限していた。実際、利益配当や残余財産分配について普通株式よりも優先される一方で議決権を有しない無議決権優先株式を除けば、上場企業が種類株式を発行することはほとんどなかった。
  しかし、2000年代以降、会社経営の自由度を高める方向での商法・会社法や取引所規則の改正が進められたことで、種類株式の多様化が進んできた。具体例としては、2001年6月のソニーによるトラッキング・ストック(子会社業績連動株式)の発行、2004年11月の国際石油開発(現国際石油開発帝石)による黄金株(拒否権付株式)の発行、2007年10月の伊藤園による無議決権株式の発行、2014年3月の普通株式の10倍に相当する議決権を有する種類株式を発行しているサイバーダインによる株式新規公開(IPO)などが知られている。また、経営陣による上場企業の買収(MBO)に際して、株式公開買付(TOB)に応じなかった株主の保有する普通株式を全部取得条項付株式に転換して会社が全部取得するという実務も定着している。

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