[視点]

2017年6月号 272号

(2017/05/18)

注目されるM&Aの「婚約破棄」

~トランプのアメリカで大型解消案件は増えるのか~

 長谷川 克之(みずほ総合研究所 調査本部 本部長代理 兼 市場調査部長)
  • A,B,EXコース

  少子高齢化が進む日本では婚姻件数が年々減少する一方で、離婚件数は高止まりが続いている。離婚件数は年間20万件を超え、婚姻件数の3分の1強にも達している。企業同士の婚姻と言えるM&Aの件数はグローバルな事業ポートフォリオ再構築や業界再編の流れの中で、国内外で増加傾向を辿っているが、最近、やや気になる動きに経営統合の断念がある。M&Aが完了する前のことだから、離婚というよりは婚約破棄の動きである。

日本ではM&A解消は多くはないが...

  日本企業が係わるM&Aについて、「レコフM&Aデータベース」で正式な対外公表からクロージングに至るまでに何らかの理由で解消される案件の数を見てみると、近年は年間10数件で推移している。M&A公表案件数は、昨年は2600件超にも及んでおり、解消案件比率は全体の1%未満ということになる。もっとも、正式な対外公表一歩手前の「経営統合の検討」といった事例も案件数に含めれば様相は少し変わってくるかもしれない。最近では3月末に、森永乳業と森永製菓が選択肢の一つとしていた経営統合の検討終了を発表した。また、昭和シェル石油との合併計画を進める出光興産では創業家の反対で難航しており、婚約発表後に紆余曲折がある場合も少なくない。
  経営統合断念の動きはM&A市場が拡大する中では自然な流れとも言える。M&Aが規模の経済、或いは、範囲の経済などを追求する企業戦略として定着する中で、案件が増えれば、何等かの理由で断念せざるを得ない事例が自ずと増えることは十分予想されることである。企業文化や経営方針の違い、株主、労働組合或いは、規制当局の反対、買収金額に対する見解不一致など、理由は多々あろう。
  実は海外では

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