[寄稿]

2017年12月号 278号

(2017/11/15)

禁止期間経過後の訴訟提起事案に学ぶ米国独占禁止法上のリスクとその対応

 木下 万暁(サウスゲイト法律事務所・外国法共同事業 弁護士・カリフォルニア州弁護士)
 エリック・マークス(サウスゲイト法律事務所・外国法共同事業 外国法事務弁護士・カリフォルニア州弁護士)
  • A,B,EXコース

1. 独占禁止法上の禁止期間とクリアランス

  日本では、一定の企業結合を行おうとする当事者は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という)の規定に従い、公正取引委員会に事前の届出を行うこととされ、当該届出受理の日から30日を経過するまでは当該取引をしてはならないとされている。かかる30日の期間は禁止期間又は待機期間と呼ばれる。日本では、この期間において公正取引委員会が審査を行い、排除措置命令を行わない旨の通知書(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則」第9条)が交付された場合には、企業結合を行おうとする当事者は、当該企業結合取引には独占禁止法上の問題はないものとして、当該企業結合取引を実施することができる。この禁止期間の経過や通知書の交付は、実務ではクリアランスの取得とも呼ばれ、企業結合取引を実施することが独占禁止法上問題ないことが「クリア」になったと当事者は理解することとなる。

  しかし、どうやら米国の取扱いはこれと少し異なるようである。2017年9月26日、米国司法省は、Parker-HannifinによるCLARCOR(取引金額43億米ドル)の買収案件につき、既に事前の届出がなされ、禁止期間が経過し、取引実施から実に7カ月が経過した状態であったにもかかわらず、その取引の一部の事業を元に戻すことを求めて両当事者に対して訴訟を提起した。Parker-Hannifinによれば、該当する事業の価値は僅か2000万米ドル(全体の取引金額の僅か5%以下)に過ぎないとのことである。これは米国のM&A実務においてこれからどういう意味を持つのだろうか。

2.米国法上の届出義務と禁止期間

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