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[M&A戦略と法務]

2018年1月号 279号

(2017/12/15)

ポストディールと知的財産の管理

 淵邊 善彦(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士/東京大学大学院法学政治学研究科 教授)

1 はじめに

  M&A・アライアンスが成功するためには、クロージング後のディールの目的の実現過程(以下「ポストディール」という)が重要であり、シナジーを実現するためのポイントとなる。ポストディールを効率的に進めるためには、基本合意書の交渉やデューディリジェンス(以下「DD」という)を行う段階から、そのための具体的な計画を立て、計画実現のために必要な手当てをすることが望ましい。

  DDにおいては、ディール実行後のあるべき事業の形や収益を確認した上で、それを妨げるおそれのある問題点や改善すべき点を見つけることが求められる(注1)。知的財産に関するDDは、弁護士、弁理士、公認会計士、知財コンサルタントなど複数の専門家が総合的に調査を行う必要があり、ポストディールにおける事業戦略や知財戦略に共通の認識を持って行う必要がある。特に技術面でシナジー効果を達成するためには戦略的に知的財産を統合・融合することが欠かせないため、その前提としての知的財産に関するDDの重要性が高くなる。

  また、基本合意書や最終契約書の交渉においても、ポストディールを意識しながら、表明保証、誓約、前提条件などの条項において、売り手に対してポストディールに必要な義務を課し、必要な約束を取り付けることになる。DDで見つかった問題点や改善点についても、最終契約書の中で十分な手当てをし、ポストディールの妨げにならないようにする必要がある。

2 知的財産関連のポストディールの作業

  ポストディールにおける知的財産に関連する具体的な作業としては、知財戦略(権利化、管理、保護などのポリシー)、研究開発テーマ・プロセス、知財部門の組織、職務発明報酬制度等の統合が行われる。以下に、主な項目を示す。

① 対象知財の確認
・ 受け入れた知的財産の内容の確認
・ 知的財産の権利移転手続
・ 継続中の紛争への対応
・ ロイヤルティ回収状況の確認
② 知財戦略の統合
・ 知財保護戦略の策定
・ 双方の知的財産の権利化および活用戦略の策定(ポートフォリオ)
・ ライセンス戦略の策定
・ 同一のライセンサーから各々許諾を受けていたライセンスの取扱い
・ 秘密保持契約がカバーする秘密情報の確認
③ 知財管理体制の統合
・ 登録済、出願中の知的財産の管理
・ 組織・人材の融合、育成
・ 営業秘密の特定・管理
・ 業務フローの統合
・ 職務発明報奨制度の統合
・ 知財管理システムの統合
・ 特許・法律事務所の整理・統合
④ 不測事態への対応
・ 薄外債務の発見
・ 劣化資産の発見
・ ライセンサーからの解除通知への対応
・ 知的財産に関連する紛争への対応

  これらの作業を、買い手が強力なリーダーシップとスピード感をもって実行することが、ポストディールの成功につながる。この作業は、一般的には、クロージング日、同日から100日後、1年後、2年後というように一定の期間毎に、統合の効果について定量的なターゲットを設定し、その達成を確認するという方法がとられる。このプロセスにおいて、いかに対象会社の知的財産を正確に把握・管理し、知的財産マネジメントについて効率的に戦略を立てられるかが重要となる。

  その際、自社のコア領域と他社に任せる領域との境界を、自社に有利に設計することがポイントとなる。そして、コア領域には知的財産を集中させ独占し、さらにコア技術を他技術と結合するインターフェース領域にも知的財産を集中させ公開することにより、競争相手を国際分業の仕組みに巻き込むことを目的とする(オープン&クローズ戦略ともいう)(注2)。

3 最近注目されているポイント

  以下においては、ポストディールの中で、知的財産に関し、最近、特に注目されるポイントについて概説する。

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