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[ポストM&A戦略]

2018年2月特大号 280号

(2018/01/19)

第110回 買収先経営者のオンボーディング(迎え入れ)

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナー)

  連載前回では、買収先の業績が悪化した場合に、一定の状況下においては経営者のインセンティブプランを敢えて見直し、リテンションを強化することがある、と紹介した。その際、このような事態を招来する一因として、買収先の経営トップやその直下の経営陣に対して、期待する業績の内容と水準を買い手がきちんと伝え、その達成にコミットさせるプロセスがややもすると弱く、またタイミングを逸していることにも触れた。
  そこで、今回は本連載第53回「100日プラン(下)」の内容を発展させ、このプロセスを買収先経営者の「オンボーディング(迎え入れ)」と新たに名付けて、考え方と実践のポイントを論じたい。
  なお、本稿執筆に関連して、マーサージャパンM&Aチームの同僚であるプリンシパルの佐々木玲子から、長年にわたり多くの示唆を得ているので、この場を借りて謝意を表したい。また、本稿の内容についての責任はすべて筆者に帰すので、念のため申し添える。

オンボーディング(迎え入れ)と何か

  乗船時などの歓迎の挨拶から転じて、会社でオンボーディング(Onboarding)といえば、新しい社員に歓迎の意を伝え、基本的な決まり事と仕組み、働き方や過ごし方を手ほどきし、仕事をうまく進めるうえで知るべき人たちを前倒しで紹介する、一連のプログラムを指す。昔でいうところの導入教育、あるいはオリエンテーションである。目的は、新しい環境で新しい仕事を始める新しい社員の不安を減らすとともに、新しい社員が一日も早く、自発的・自立的・自律的に活動を開始し、持てる力をフルに発揮するように助けることである。創業の精神や企業の価値観、今後のビジョンなどの重要事項についても、オンボーディングではより踏み込んだ説明があり、各自が思いを新たにするように工夫をする。
  さて、本稿で取り扱うオンボーディングの対象は、買収先の経営トップおよびその直下の経営陣(いわゆる経営チーム:Executive Team)である。経営者向けである以上、オンボーディングで伝えるメッセージの中核は、買い手が期待する業績の内容と水準となる。経営チームには、その実現のために、全力で働いてもらわなければならない。
  図に示した通り、①買収先経営者のリテンション(思わぬ離職の抑止)を受けて②オンボーディング(迎え入れ)が行われ、その後に③ガバナンス(コントロールと牽制)が発動される。オンボーディングは、サイニング後からクロージングまでの間に完了し、その主要な内容は、典型的には100日プランの検討ガイドラインとガバナンス実施要項に反映される。また、オンボーディングで伝えることになる重要メッセージは、その方向性や概要を、リテンション交渉時に上手に頭出ししておく。

リテンション交渉時におけるオンボーディングメッセージの仕込み

  リテンション交渉時に行うことのうち、本稿の趣旨から特に重要なのは、P to Pミーティングである。P to P とは、Principal to Principalの略で、代理(Agent)やアドバイザーを介さず、トップ(Principal)同士が直接コミュニケーションを取る様式の総称であり、M&Aの重要な場面で活用される。実施タイミングは、目的からしてサイニング前でなければならない(図の左列)。

  具体的には、買収先経営トップの上司になる人物(=買い手プリンシパル)が、リテインしたいと考えている買収先経営トップ(=買収先プリンシパル)に対して、事業に対する自らの思いや構想、そして想定される取組みの概要を語り、さらに本人への期待をある程度具体的な業績にして頭出しすることが重要である。つまり、

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