[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2019年3月号 293号

(2019/02/15)

航空機部品で高い技術を持つ今井航空機器工業が、東京海上キャピタルと組んだ理由

  • A,B,EXコース
航空機部品の金属機械加工・表面処理の一貫製造体制を構築

左から今井 哲夫(今井航空機器工業 代表取締役社長)、今井 洋一郎(同、専務取締役)

左から今井 哲夫(今井航空機器工業 代表取締役社長)、今井 洋一郎(同、専務取締役)

 2018年7月、東京海上キャピタルが管理・運営する TMCAP2016 投資事業有限責任組合(以下「TMCAP2016」)が今井航空機器工業の9割超の株式を取得した(今井家は1割弱再出資)。

 今井航空機器工業は、日本のほかマレーシア、ベトナムを拠点に航空機部品の金属機械加工・ 表面処理の一貫製造体制を構築している。特に大型部品の精密加工を得意とし、これまで順調に事業を拡大させてきた。また、タイでは航空機産業で培った高水準の品質管理、サービス力を活かして自動車部品の金属加工事業を行っている。年商は連結ベースで約47億円。

 今井航空機器工業に投資した東京海上キャピタルは、1998年の第1号ファンド設立以降、TMCAP2011組合(総額233億円)に至るまで国内外の機関投資家向けに4本のファンドを組成し、過去20件近いバイアウト投資を実行。国内最大のCMO(医薬品製造受託専業メーカー)である武州製薬やベビー・子供服のトッププランドであるミキハウス等、投資回収も順調に進め、良好なパフォーマンスをあげ、16年には5号ファンドとなるTMCAP2016をファンド総額517億円で立ち上げている。

 航空機製造業界は、ボーイングやエアバスといった限られた完成機メーカーに対してTier1(一次サプライヤー)が部品を製造・組立して供給し、また、Tier1に対してTier2(二次サプライヤー)が部品を製造・組立して供給するピラミッド構造となっている。航空機は故障が深刻な事故につながる危険性が高いため、各部品メーカーには素材の調達方法、使用工具、加工プロセスなどすべてにおいて、外部認証機関や発注メーカーから認証を受ける必要があり、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格「JIS Q 9100」や熱処理や化学処理といった特殊工程の国際的な認証プログラムである「Nadcap(ナドキャップ)」などの取得が不可欠で、それだけに参入障壁は高い。

 順調に事業を拡大してきた今井航空機器工業が、なぜPEファンドの出資を仰いだのか。同社の今井哲夫社長、今井洋一郎専務と東京海上キャピタルの車将之プリンシパルに聞いた。

<インタビュー>
グローバルな競争に打ち勝つために資金とネットワークの拡大が不可欠

 今井 哲夫(今井航空機器工業 代表取締役社長)
 今井 洋一郎(同、専務取締役)
 車 将之(東京海上キャピタル プリンシパル)

自動車部品、機械部品の製造から航空機器へシフト

今井 哲夫氏

今井 哲夫(いまい・てつお)

1973年芝浦工業大学工学経営学科卒業。川崎重工入社。77年 川崎重工退社。78年今井航空機器工業入社。91年1月代表取締役社長に就任。2004年岐阜県金属工業団地協同組合代表理事就任。18年6月岐阜県中小企業団体中央会会長に就任。

―― 今井航空機器工業が航空機の部品等を扱うようになった経緯は?

今井社長 「父は戦前、川崎航空機に勤務していました。戦後、航空機製造が解体されたので祖母の実家で農業をして、資金を貯め汎用旋盤を買い、今井製作所を1947年に創業しました。当時、岐阜地区は繊維関連産業が盛んで、織機の部品のほか、『キャブトン(Cabton)』というブランドでオートバイを造っていたみづほ自動車製作所(1956年倒産)向けの部品とか、川崎重工のバスの部品や日本車両の部品を手掛けるなど、自動車部品、機械部品の製造販売を始めました。航空機の関連部品を手掛けるようになったのは58年で、川崎重工のT-33という訓練用の練習機の治工具を扱ったのがきっかけでした。その後、76年に

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