[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2019年10月号 300号

(2019/09/17)

第174回 建設業界~M&Aにより再編と事業領域拡大が進展する通信工事業界(上)

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
(以下、文中、HDはホールディングスの略称)

1. はじめに

 本稿では、通信設備工事を主要な事業としている通信工事業界のM&A動向について2回に分けて概観した(次回は2019年11月号掲載予定)。

 通信工事業界はコムシスHD、協和エクシオ、ミライトHDの大手3社による寡占市場と言われている。国土交通省「建設工事施工統計調査報告(2017年度実績)」によると電気通信工事業の元請完成工事高は1兆4563億円、これに下請完成工事高8708億円を加えた合計額は2兆3270億円であった。大手3社の通信工事に関わる売上高は合計で約7300億円(2019年3月期)であり、国土交通省報告による完成工事高を市場全体の規模と考えた場合、やはり大手3社の寡占度は比較的高いものと考えられる。そして3社とも市場シェア獲得に向けて活発にM&Aを行ってきた。

 一方で大手3社の他にも日本電気子会社のNECネッツエスアイや独立系のJESCOホールディングスなど通信工事を手掛ける有力企業があり、こうした企業もM&Aを積極的に活用している。

 本稿の前半(上)では大手3社のM&A動向、そして後半(下、次号)ではこの他の有力企業のM&A動向について述べてみたい。


2. 事業環境の厳しさを示す建設業界の関連指標

 マール・オンライン「データを読む」2019年3月号でも取り上げられているように、建設業界のM&Aが増加している(図表1参照)。

 現状、首都圏の再開発などに伴い建設需要は堅調ではあるが、既に技術力を有する就業者の高齢化や不足が深刻化している。

 例えば、日銀短観2019年6月調査における全産業ベ-スの雇用人員判断DI(雇用人員につき「過剰」の回答割合から「不足」の回答割合を差し引いて算出したもの)は-32であったが、このうち建設は-49であり全産業の中でも人手不足感がかなり強い。実際、求職者1人に対して何人の求人があったかを示すいわゆる有効求人倍率(2018年平均)は1.61倍であったが、職業別にみると建設業では4.65倍であった

 総務省労働力調査によると、全産業ベース就業者の年齢構成は55歳以上が30.2%、29歳以下が16.5%であった。このうち建設業就業者の年齢構成については55歳以上が34.8%、29歳以下は11.1%であり、建設業における少子・高齢化の影響はより深刻と考えられる。

 また、筆者は

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