[Webインタビュー]

(2022/04/08)

【第140回】【野々宮代表取締役が語る】GCAが米フーリハン・ローキーと経営統合した理由

野々宮 律子(フーリハン・ローキー 代表取締役)
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世界最大の独立系M&A助言会社へ

―― GCAは、米フーリハン・ローキー(HL)と経営統合し、2022年2月22日に社名を『フーリハン・ローキー』に変更されました。経営統合の経緯についてお聞かせください。

「私たちは日本に本社を置きながら米国、欧州にもチームを持ち、グローバルのM&Aアドバイザリー業務を展開してきました。自社の経営戦略についても、会社のさらなる成長のために何をしていくべきか、強み、弱みはどこか、今後のグローバルでの展開の在り方やそれに伴う企業との組み合わせなど、様々なオプションについて常に議論してきました。それと同時に、上場企業としての責務がありますので、この2つのバランスを取るという意味での次の一手は、日米欧のグローバルボードで相談をして、それぞれのリージョン、それぞれのメンバーが納得のいく、そして、いろいろなステークホルダーの立場を考えての1つの選択であったということです。

 お蔭様で、欧米のGCAではコロナ禍にあってもテック分野のM&Aが急増し、直近決算500億円を超える売り上げのうち、8割強を欧米事業で占めるまでに成長しました。こうした中で、テック分野と欧州に強いGCAと、非テック分野と米国に強いHLを統合することで世界最大の独立系M&A助言会社となるべく、2021年11月にGCAを非公開化しました。

 非公開化に続き、皆様にご愛顧いただいた『GCA』の社名を変更することは非常に難しい決断でしたが、GCAとの統合で世界ナンバーワンになったHLブランドに完全に一本化することにより、さらにお客様のお役に立つと同時に、グローバル企業として人を育てようと決断しました」

米フーリハン・ローキーとは

―― 米フーリハン・ローキー(HL)とはどういう会社ですか。

「1972年創業で、今年で50年を迎えました。カリフォリニア州・ロサンゼルス(LA)に本社を置き、ニューヨーク証券取引所上場企業で、時価総額は約7000億円と、独立系アドバイザーとして最大規模で、米国M&Aアドバイザリー件数ランキング7年連続ナンバーワンの実績を誇ります。GCAと統合したことで、日本を含む世界37都市、米国・欧州・アジアにそれぞれ1000人、400人、250人規模の従業員を擁する体制となり、独立系アドバイザーとして世界ナンバーワンの実績をもつことになったのです(図表参照)。

 HLはアドバイザリー、リストラクチャリング、バリュエーションの3つのセグメントで構成されています。いずれも米国でトップの実績を持ちます。いわゆる米国ウォールストリートの投資銀行と考え方が違い、派手なことをやらなくても構わない。確実に成功できるものをやる。リストラクチャリングや破たん系の案件はシクリカリティがもたらすボラティリティが高いため、みんなが触りたがりませんが、HLはそれを柱としています。元々バリュエーションをやっており、このバリュエーションチームがフェアネス・オピニオンを書いています。訴訟リスクを伴いますが、彼らは、軍隊級の弁護士を雇って、訴訟があることを所与のものとして計算されたリスクを取ってビジネスをやってきました。その結果、今や彼らしかオピニオンをかける人がいなくなり、アメリカにある約900社のプライベート・エクイティ・ファンドとヘッジファンドがHLの上客になりました。彼らはバンクホールディングカンパニーモデルと比べると、伸び伸びと成長してきた、成功者だといえます。その成功フィロソフィを様々なところに応用できますので、私たちも同じように成功者になりたいと考えています」

フーリハン・ローキー会社概要





『日本発グローバル』の旗は降ろさない

「私たちは『日本発グローバル』を、日本のチームとして誇りにしてきました。その気持ちは変わりません。お客様は『日本発グローバル』の『日本発』に期待を寄せ、親近感もあったと思います。今後について心配の声を随分いただきましたが、『日本発グローバル』でありながら、日本が本社でなくなったことには拘らず、お客様にどれだけ付加価値の高いサービスを提供できるか、そこがポイントなのです。

 GCAの米国チームはテック分野が中心で、しかもシリコンバレー発であるため、尖ったテックエリアを深掘りしてきました。しかし、日本の企業は海外M&Aの目的の1つとして、グローバルに成長を取りに行く戦略が多く、そのため幅広い選択肢の提案が必要ですが、その提案力がある意味、狭く深い形となりがちでした。日本企業がグローバル展開するうえで米国市場は重要であり、米国において様々なセクターの企業に幅広い情報や広がりのある提案ができることは必須です。今回、HLを選んだことで、我々はそれを手に入れることができました。

 また、HLは、200億円から2000億円ぐらいのミッドキャップゾーンを得意としています。日本の企業のM&Aは比較的そのゾーンが多く、まさにスイートスポットで、そこの補完関係があると思っています。そういう意味で、『日本発グローバル』の旗を降ろさずに、『日本発グローバル』をさらに推進できるチーム体制になり、情報網も手に入れました。各々の立ち位置、カルチャーや言語も違いますが、同じような信念を持ち、チームが同じ方向を向いているところはGCAもHLも似ています。日本、米国、欧州の仲間もこの人たちとなら、とみんながそう思えた。だから成就したのだと思います」

渡辺会長との役割分担

―― 以前の渡辺章博代表取締役体制と何がかわりましたか。

.....


■野々宮 律子(ののみや・りつこ)
大学卒業後、KPMGニューヨークで米国公認会計士として監査業務からスタートし、日本企業の海外進出をサポートするM&Aアドバイザリー業務に転向。その後外資系投資銀行を経て、ゼネラル・エレクトリック(GE)に5年間在籍。GEキャピタルのアジア・パシフィック地域統括会社において、ビジネス・デベロップメント・リーダーとして戦略的ポートフォリオマネジメントを遂行。2013年GCAに入社後、マネージングディレクターとしてクロスボーダーおよび国内M&A案件に従事。米フーリハン・ローキーとの経営統合により2022年2月に現職就任。ロングアイランド大学卒業、コロンビア大学MBA/㈱資生堂社外監査役、長瀬産業㈱社外取締役

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