ストーリーを語れる経営トップ 本連載第3回となる今回は、「9つの行動」の2点目にあたる「成長戦略・ストーリーの共有・浸透」について解説をしていく。前回は、海外M&Aにおける判断軸となる目指すべき姿と実現ストーリーを経営トップが海外M&Aを検討する前の段階で明確化しておくことの重要性を述べたが、その目指すべき姿と実現ストーリーは、経営トップのみが把握しておけばよいものではなく、買収案件に関与する関係者一人ひとりが理解して実行に移すことが必須である。そのためには、経営トップ自らが「ストーリーテラー」として自社のビジョンや戦略を語ることで、関係者への共有・浸透を図ることが求められる。(もちろん、ここで言う経営トップとは、社長やCEO1人だけではなく、当該事業に責任を持つ事業責任者たる取締役・執行役員なども含まれる。)
(図表1) 海外M&Aを経営に活用する9つの行動
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プレディールにおける成長戦略・ストーリーの共有・浸透 成長戦略・ストーリーの共有・浸透を、コミュニケーションの対象者とタイミングで整理すると、図表2の形となる。
(図表2) コミュニケーションの対象者とタイミング
![](https://www.marr.jp/shared_files/entry/icon/Deloitte/03_20180704/20180704-2.jpg)
プレディールの段階では、特定の海外M&Aに特化したコミュニケーションを実施するのではなく、目指すべき姿と実現ストーリー(特に前者)についてその重要性や妥当性を強調し理解を得ることが主目的となる。
国内での事業展開が大半を占めるA社において、競合のグローバル企業買収を主導し海外市場への本格展開の足掛かりを作ったのは、過去に海外事業部長を経験していた当時のCEOであった。当CEOは…
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社■筆者略歴
小高 正裕(こたか・まさひろ)![](/shared_files/entry/icon/Deloitte/01_20180606/kotaka.jpg)
海外企業買収後の統合支援(クロスボーダーPMI)、グローバル・グループ・ガバナンス構築や組織再編など、日本企業のグローバリゼーションを支援するプロジェクトを、消費財、金融、ライフサイエンス、ハイテク、化学、エネルギーなどの業界にて数多く手掛ける。海外企業買収後の業績立て直しや、海外M&A推進能力向上に関するコンサルティングも実施している。
クロスボーダーPMIに関するメディアへの寄稿やセミナーなど多数実施。