[視点]

2023年7月号 345号

(2023/06/09)

東証の「PBR1倍割れ企業への改善要請」の本質

古田 温子(ボードアドバイザーズ パートナー)
  • A,B,EXコース
 東京証券取引所が3月31日に、プライムとスタンダードの2市場に上場する約3300社に対し、「資本コストや株価を意識した経営」に取り組むよう通知文を出した(注1)。割安な株価を象徴する表現として「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」という言葉が殊更目立っている印象ではあるが、プライム市場上場企業の約半数を占める「PBR1倍割れ企業」は今回の東証の改善要請をどのように受け止めたのだろうか?

 実は、この「受け止め方」が極めて重要だ。さらに言えば、「(1)誰が」「(2)どのように受け止め」「(3)どういう行動に結び付けるか」が、企業の命運を決めるといっても過言ではないだろう。

(1) 当事者意識を持つべきは誰か?(Who)

 東証の資料を読むと、当事者として想定されているものとして「会社」「経営者」「取締役会」「経営層」「上場会社の皆様」と実に多様な表現が使われている。筆者なりに整理をしてみると、現状の分析・評価を行うのは「取締役会」で、経営を実行するのは「経営者(層)」、さらにその結果をモニタリングするのは「取締役会」ということになる。端的にいうとPDCAを回していくことが期待されているのだが、執行サイドである経営者はもちろんのこと、社外取締役を含む「取締役会」にも積極的な関与が求められていると言える。

(2)どのように受け止めるべきか?(How)

 今回の東証の要請を受け、「また対応すべきことが1つ増えた」と捉えるか、「これを奇貨として会社を変えていこう」と思うかで、ここから数年後の企業の立ち位置は大きく変わるだろう。そう、企業は二極化するのだ。プライム企業は200社もあれば十分、との声も聞こえる中、東証は敢えてこの二極化による選別を狙っているのではないだろうか、と勘繰りたくもなる。

 コーポレートガバナンス・コードのコンプライ or エクスプレインは、


■筆者プロフィール■

古田氏古田 温子(ふるた・あつこ)
株式会社ボードアドバイザーズ パートナー
上場会社の企業価値/株主価値向上の実現をサポートするため、事業戦略、財務・資本政策、ESG(環境、人材、ガバナンス)等多様なアプローチで、志ある経営者を支援。企業価値を形成するのは経営人材であるとの確信の下、資本市場の視点を入れたガバナンス&経営人材コンサルティング及び経営者向けコーチングを提供すべく、2022年10月当社に参画。
1990年、野村證券株式会社に入社。19年間、投資銀行部門にて新規事業開発及びコンサルティング業務に従事し、企業防衛支援に強みを持つ。2014年より株式会社アイ・アールジャパンにて、アクティビスト対応、企業防衛支援、取締役会実効性評価、中期経営計画の策定支援等に従事。2021年、経済産業省「CGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会」第3期委員。
1990年、一橋大学商学部卒業

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング