[M&Aスクランブル]

(2022/06/28)

マジョリティ・オブ・マイノリティ(MoM)条件の意義を問う~公正性担保措置としての意義は十分か

マール企業価値研究グループ
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M&A指針から3年が経過

 2019年6月、経済産業省が「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下、M&A指針)を公表し3年が経過した。このM&A指針は近年、コーポレートガバナンス強化への取り組みが行われていることなどを背景に、MBO以外の取引類型もその意義と課題に関する論点を整理すべきとの指摘を受けて、策定された指針である。

 なぜ、このような指針が必要となったのか。M&A指針では、MBOや支配株主による従属会社の買収のような類型のM&Aの場合、一般株主と支配株主や経営者などの買収者の間に、構造的な利益相反が存在することや、情報面での格差があることにより、一般株主の利益が損なわれる可能性があることが指摘されている。M&A指針においては、このような場合に実務上の「公正性担保措置」を設けることがベスト・プラクティスとされている。さらに、この公正性担保措置のうち、独立した特別委員会の設置をはじめとする一般的に有効性が高いと考えられる典型的な措置を取り上げ、その機能や望ましいプラクティスの在り方を提示している。本稿で取り上げるマジョリティ・オブ・マイノリティ(MoM)条件の設定は、典型的な公正性担保措置の1つである。

 本稿では、MoM条件の設定とそれに関連する具体的事例を振り返りながら、MoM条件の示唆するところを考えてみたい。

「MoM条件」の枠組みの整理

 MoM条件とは何か。M&A指針によると、「M&Aの実施に際し、株主総会における賛否の議決権行使や公開買付け(TOB)に応募するか否かにより、当該M&Aの是非に関する株主の意思表示が行われる場合に、一般株主、すなわち買収者と重要な利害関係を共通にしない株主が保有する株式の過半数の支持を得ることを当該M&Aの成立の前提条件とし、当該前提条件をあらかじめ公表すること」(M&A指針の39ページを参照)を指す。

 MBOや支配株主による従属会社の買収のように、支配株主が100%の株式を取得し、被買収会社を上場廃止することが望まれる場合、会社法上、例えば、株主総会の特別決議により3分の2以上の株主の賛同を得た場合において、反対株主の同意を得ることなく、当該株式を、株式交換や株式併合により金銭を対価として取得することは可能である(以下、キャッシュ・アウト)。通常の場合は、支配株主が51%を保有する場合、TOBで15.7%を取得すれば計66.7%を所有することとなり、キャッシュ・アウトの要件をクリアすることとなる。…

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