金融ビッグバン以降の証券会社経営の歴史を紐解く
証券会社は業績が市場動向に左右されると共に、規制業種として規制動向に経営が影響を受ける側面が強く、過去より業界内外での合従連衡を繰り返してきた経緯がある。また、金融ビジネス自体が変化する中で、足元も大きくその姿を変えつつある。そのような中でM&Aが果たす役割も大きいのではないだろうか。本稿では証券会社自身のM&Aの歴史と今後の可能性について確認してみる。
証券業界の再編に対して大きなインパクトを有する出来事として挙げられるのは、言うまでもなく、日本版金融ビッグバン(金融ビックバン)であろう。第2次橋本政権下の1996年において掲げられた方針であり、我が国金融市場を2001年までに、ニューヨーク、ロンドン並みの国際市場に再生させることを目指し、「フリー・フェア・グローバル」の三原則に則った市場の改革を行うというものであった。
国際金融都市としての東京と、日本の基盤産業としての金融の育成を目指す構想はその後も幾度となく繰り返されることとなるが、橋本政権下での金融ビックバンの特徴は金融資本市場を取り巻く様々な規制に実際にメスが入ったことである。具体的には、会社型投信・私募投信の導入、株式売買委託手数料の自由化、証券業の参入規制を免許制から登録制へ移行、有価証券取引税の撤廃など、多岐にわたる。
証券業界に大きく影響を及ぼしたのは、1998年の売買委託手数料の自由化である。それまでの証券会社のビジネスモデルは、株式売買委託、すなわちブローカレッジが収益の柱であったが、1989年度に業界全体で約3.1兆円存在した委託手数料は、2004年度には約8000億円にまで減少することとなった(注1)。