[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2022/08/18)

【第7回】バイオ燃料のリーディング・カンパニーを目指すChevron(前編)

出馬 弘昭(IZM代表)
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 前回まで欧州石油メジャー上位3社(Shell、BP、Total)のクリーンテック分野での出資・買収活動を紹介してきた。今回は北米石油メジャーの活動を紹介する。北米石油メジャーの上位5社は、ExxonMobil、Chevron、Marathon、Valero、Phillips 66である。

 このうち、ExxonMobilはクリーンテック分野での活動がほとんどない。2017年、トランプ氏は大統領就任時、ExxonMobilのCEOを国務長官に任命した。ExxonMobilは気候変動問題に反対するトランプ氏と蜜月であったため、クリーンテック分野へシフトが遅れた。2010年から2020年の間に、時価総額はChevronの2倍以上落ち込んだ。その結果、2020年にExxonMobilはダウ平均の構成銘柄から除外され、デジタル大手のセールスフォース と入れ替わった。

 2020年にはExxonMobilとChevronの合併協議が行われたと報じられた。もともとこの2社はロックフェラーが創業したスタンダード石油が分割されて誕生した会社である。もし2社の合併が実現すればエネルギー業界最大のM&A案件になると大きな関心を呼んだ。2021年、ExxonMobilの株主はExxonMobilに対して気候変動対策を強化するよう要求したが、いまだグリーンエネルギー会社へのトランジッションに向けた目立った動きは出ていない。

 Chevronを除く4社の本社はオイル&ガスのメッカである米テキサス州にある。Marathon、Valero、Phillips 66の3社もExxonMobil同様、クリーンテック分野での目立った動きはない。つまり、北米石油メジャーの中で、Chevronのみが欧州系同様にクリーンテック分野で活発に活動している。環境政策に熱心なカリフォルニア州に本社を置いているのも一因である。

■ 筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。2022年、大阪大学フォーサイトの取締役に就任。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。
大阪大学フォーサイト
https://ou-foresight.com

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