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(2022/08/24)

キトー~KKR傘下のクロスビー・グループ(米国)と経営統合し再度非上場化へ

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
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 2022年5月、ホイストクレーン大手のキトー(東証プライム市場上場)が、外国企業との経営統合とこれに伴う非上場化を発表した。

 ホイストとは重量物を吊り上げ、運び、固定するために使用する巻上機のことである。同社によるとホイスト製造国内市場における同社シェアは60%に達しており、まさしく日本のリーディング・カンパニーである。同社のホームページにはホイストを導入した業種の例として、「鉱山、建設土木、造船、製紙、クリーンルーム、食品、自動車、高炉、電力、風力、石油ガス、航空、運輸、鉄道、エンターテイメント」が挙げられており、多種多様な分野で使用されている。個別の導入例をみると、クリーンルームでの半導体生産用として重量物搬送時に発塵を防ぐホイストや、食品業界向けに食品に触れる可能性がある部品に防錆・防塵処理を施したホイスト、また、イベント会場で音響機材等を吊り上げ、ステージ上の狭い場所に据え付けるために小型・軽量化したホイストなどが紹介されており、同社の技術力の高さが窺える。

 実をいうとキトーの非上場化は今回がはじめてではない。同社は1932年に創業され1980年に株式を店頭公開したが、2003年10月に米国大手投資会社のカーライル・グループの支援を受けてMBOにより非上場化した。その後、2007年8月には東証1部市場へ再上場を果たしている。

 図表1はキトーの業績推移である。バブル崩壊後の国内景気低迷などによって非上場化前の2002年3月期には最終赤字を計上し、2003年3月期の最終利益も約4億円にとどまっていた。また、バブル期の積極的な設備投資により有利子負債も膨らんでいた。自社を再度成長軌道に乗せるためには海外事業拡大による国内依存型からの脱却や財務体質の抜本的改革が必要と判断し、カーライル・グループの支援の下、2003年に一旦市場から退場した。上場廃止後、ダイフク(東証1部上場)への物流システム子会社の譲渡(2004年)など事業構造改革進展や、米国及び中国を中心とする海外事業拡大、また、国内市場の回復も追い風となり業績は急回復。2007年には東証1部へ再び上場した(文末※1参照)。

 その後、リーマン・ショックを契機とする世界同時不況や新型コロナ発生の影響を受けながらも比較的順調に成長を遂げ、2022年3月期には、売上高、経常利益、当期純利益(親会社帰属分)が過去最高となった。この間M&Aも活用しながら海外拠点を拡充(図表2参照)し、上場廃止前の2003年3月期に32.1%であった海外売上比率は、2022年3月期には77.9%に上昇している。

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