[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2022/12/20)

【第11回】欧米電力大手、米エクセロン(Exelon)のM&A戦略

出馬 弘昭(IZM代表)
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米国最大の電力会社

 米国には約3000の電力会社がある。その中で、クリーンテック関連の活動が1番活発だと筆者が評価している米国電力大手のExelon(エクセロン)を取り上げる。

 Exelonは電力会社の買収を重ねて、米国最大の電力会社となった。シカゴに本社があり、傘下にPECO Energyなど6つの電力会社を持ち、顧客数は1000万にのぼる。

 筆者がシリコンバレーに赴任した2016年、あるカンファレンスで、Exelonの幹部が「エネルギー大変革時代を乗り切るために、シリコンバレーに学ぶ」と宣言した。当時は、米国の電力最大手がスタートアップの働き方を取り入れようとしていることに驚いた。

 Exelonは本体およびCVC子会社のConstellation Technology Ventures(CTV)でスタートアップに出資し、育成を行っている。ただし、欧州電力のようなスタートアップの買収事例はない。

Exelon本体での出資

 Exelon本体では、2014年から5つのスタートアップに出資を行っている。

 2014年にカーボンフリー天然ガス火力発電の米NET Power(2012年創業)、2019年に不動産ESGデータ管理の米Measurabl(2013年創業)、2020年に自治体向け炭素会計の米Dynamhex(2018年創業)、2021年に商品配送プラットフォームの米Lura(2020年創業)、2022年に炭素会計の米ClearTrace(2017年創業)に出資した。

 しかし、Exelon本体でのスタートアップ出資は件数が少なく、フォーカスエリアも見当たらない。また、投資先は米国スタートアップのみで、欧州電力が米国スタートアップに出資するような越境案件もない。

Exelonの投資子会社CTV

 投資子会社のCTVは、2010年に設立された。本社はメリーランド州のボルチモアにある。これまで40社に2億米ドル超を投資した。主なポートフォリオ企業を紹介する。

 2010年、エネルギー管理の米Consert(2008年創業)に初めて出資した。同社は2013年にスマートメーター大手のスイスのLandis+Gyrに買収されている。

■ 筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。2022年、大阪大学フォーサイトの取締役に就任。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。
大阪大学フォーサイト
https://ou-foresight.com

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