[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2023/01/19)

【第12回】欧米電力大手、英セントリカ(Centrica)のM&A戦略(前編)

出馬 弘昭(IZM代表)
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 今回は英国の電力ガス小売り最大手Centrica(セントリカ)のM&Aと投資動向を紹介する。

 Centricaは英国ガス公社British Gas(ブリティッシュ・ガス)を母体とし、1997年に設立された持株会社である。傘下に家庭向け小売り部門、法人向け小売り部門および上流開発部門を持つ。

 Centricaは1999年から企業買収、2015年からスタートアップ投資を行ってきた。2017年にはCVC子会社のCentrica Innovations(CI)を設立し、スタートアップ投資を加速させた。CIのファンドサイズは5年間で最大1億ポンド、主な投資領域は分散型エネルギー、スマートホームおよびデジタルとし、シリコンバレー、ロンドン、テルアビブなどに拠点を置いた。CIはスタートアップ投資・協業を通じて、Centrica全体にスタートアップのイノベーティブな文化を組み込む役目も果たした。これまでに企業買収は20件、スタートアップ投資は18件にのぼる。2020年までにCentricaはスマートホームと分散型エネルギー分野に12億ポンドを投資した。

ワンストップサービスで事業拡大

 英国では1990年、電力自由化が始まった。1999年には全面自由化され、家庭用含めすべての顧客が電力の購入先を自由に選択できるようになった。英国企業および外資の「ビッグ6」と呼ばれる大手6社グループ(エーオンUK(ドイツ)、RWEエヌパワー(ドイツ)、EDFエナジー(フランス)、スコティッシュパワー(スペイン)、スコティッシュ・アンド・サザン・エナジー(英国)、ブリティッシュ・ガス(Centrica、英国)が電力市場を寡占し、割引料金、ガスと電力のセット販売などによる顧客獲得競争が激化した。

 ビッグ6の1つであるCentricaは1999年、「ダイナミックな顧客サービスを提供するコングロマリットを目指す」という経営戦略を打ち出し、事業の多角化を図った。電気ガスに加えて、新しいサービスを次々と買収し、ワンストップサービスを提供した。

■ 筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部機械系物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米クリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。2022年、大阪大学フォーサイトの取締役、東京都の脱炭素化Fund of FundsとインベストメントLabのアドバイザーに就任。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。
大阪大学フォーサイト https://ou-foresight.com
東京都の脱炭素化FoF https://www.tokyo-vc-fof.jp/
インベストメントLab https://www.investmentlab.co.jp/

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