[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2023年6月号 344号

(2023/05/12)

【ユーザベース】カーライルと組んで描く成長戦略とは

―― ユーザベース・佐久間衡 代表取締役 Co-CEOとカーライル・小倉淳平 マネージングディレクターが語った

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佐久間 衡(ユーザベース 代表取締役 Co-CEO:右)と小倉 淳平(カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクター:左)

佐久間 衡(ユーザベース 代表取締役 Co-CEO:右)と小倉 淳平(カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクター:左)

創業15周年を目前に決断

 経済情報プラットフォーム『SPEEDA』などを展開し、グロース市場に上場していたユーザベースが、米投資会社カーライルが実施したTOBによって2023年2月に上場廃止となった。

 ユーザベースの設立は2008年4月。UBS証券投資銀行本部で事業会社の財務戦略の立案、資金調達支援、自己勘定投資を担当していた梅田優祐氏(ユーザベース・元代表取締役共同経営者)の発案だった。

 「投資銀行時代、仕事のために必要な企業の財務データ、統計データ、ニュースなどのいわゆるビジネス情報を集めようとすると、必要な情報に辿り着くために膨大な時間が必要で、まさに情報の海に溺れているという極めて非合理な状態でした。海外大手企業によるサービスはあるのですが、どれも非常に使い難くて複雑だったのです。そこにB2Cの世界にある『Google』や『Facebook』に代表されるようにシンプルで直感的に使えるようなものをB2Bの世界で提供できないか。誰もやっていないのであれば、自分達でやろうと考えたのが創業の原点」だったと、梅田氏は本誌に語っている。

 梅田氏は、このアイデアを高校時代の同級生だった稲垣裕介氏(現代表取締役Co-CEO/CTO)に話をし、さらにUBS証券の中途入社で同期だった三井物産出身の新野良介氏(元代表取締役共同経営者)にも持ちかけたところ、意気投合して起業した。

 その後ユーザベースは、経済情報プラットフォーム『SPEEDA』のほか、ソーシャル経済メディア『NewsPicks』、スタートアップ情報プラットフォーム『INITIAL』、営業DXソリューション『FORCAS』、新興業界分析プラットフォーム『SPEEDA Edge』など9事業を展開するまでに成長。2016年10月には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場した。

 売上高は、上場初年度31億円だったが、直前の2022年12月期には業績予想ベースで182億円と、6年間で約6倍へ成長させてきた。しかし、営業利益は2021年12月期の14億6000万円をピークに、2022年12月期は成長のための先行投資もあり3億円と大幅な減益となり、株価も2022年10月には年初来安値606円を付けるという不振に陥った。

 その躓きの石となったのは、2018年7月の米ネット経済メディア「Quartz」の買収(7500万ドル相当)だった。その後、米市場でのネット経済メディア事業の加速を狙ってNewsPicks USAとQuartzを統合したが、結果的に事業撤退を余儀なくされ、2020年12月期決算で88億円の特別損失を計上。

 SPEEDA等のSaaS(Software as a Service)事業は堅調だが、NewsPicksの2022年12月期の単体業績はQ3までで累計3億円の赤字となっており、来期での黒字化が必達という状況だった。

 2023年4月で創業15周年を迎えたユーザベースは、カーライルの下でどのような成長戦略を描いているのか。ユーザベースの佐久間衡・代表取締役 Co-CEOと小倉淳平・カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクターに聞いた。

<インタビュー>
『経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる』というパーパスをこれまで以上に進める

 佐久間 衡(ユーザベース 代表取締役 Co-CEO)
 小倉 淳平(カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクター)

非公開化の道を選んだ2つの理由

―― ユーザベースは、米投資会社カーライルが株式を取得し、2023年2月7日株式を非公開化しました。なぜ、ユーザベースは非公開化の道を選んだのでしょうか。

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