- <目次>
- 大きなサプライズがなかった6月株主総会
- ストラテジックキャピタルはダイドーリミテッドに長期投資、旧村上ファンド系は短期投資
- 東洋証券と北越コーポレーションに対する株主提案はぎりぎり否決
- オアシスがクスリのアオキ HDに社長を含む取締役3名の解任を提案
- 今年の株主総会で初めて株主提案を行ったファンド
- 日本グローバル・グロース・パートナーズの株主提案
- リム・アドバイザーズの天馬に対する株主提案も約4割の賛成を集める
- 低賛成率の株主提案は株主構成に依存することが多い
- 個人もアクティビストになる時代は未だ来ず
- 株主総会後のアクティビストの大量保有報告書提出
大きなサプライズがなかった6月株主総会 2024年6月の株主総会で株主提案を受けた企業は91社(1社撤回されたため審議された提案は90社)と過去最高になったが、株主提案が成立したのはストラテジックキャピタルのダイドーリミテッドに対する取締役選任のみであり、「大山鳴動して鼠一匹」ともいうべき結果だった。ただ、日本では毎年新規の
アクティビストが1~2社参入し、成立する株主提案も1~2件であることが多いので、例年通りのサプライズがない結果だったともいえる。
三菱UFJ信託銀行の集計によると、総提案数336件のうち66%の220件は定款変更だったが、成立には3分の2以上の賛成が必要なので、一般に成立は難しい。アクティビストは成立が困難と知りながらも、他に提案方法がないことや、会社に対する揺さぶりまたは交渉ツールとして、定款変更の提案を行うことが多いようだ。2番目に多い株主提案は剰余金処分の12%、3番目に多い提案は取締役選任の11%だった。
最近ではアクティビスト側の取締役候補になることを厭わない元経営幹部が増えてきたので、アクティビストは取締役選任の
プロキシ・ファイトを行い、その一部が成立するようになってきた。日系運用会社も業績の長期低迷企業で、現経営陣に責任があると思われる場合は、アクティビスト側の取締役候補に賛成するようになってきた。2023年度末にかけての株価上昇や、アクティビストのファンドサイズが大きくなったことを反映して、時価総額が1000億円超の企業が株主提案先になる割合が高まってきたが、欧米に比べると、中小型企業がターゲットになるケースが依然多い。
■筆者プロフィール■
菊地 正俊(きくち・まさとし)
1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社。大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017~2020年1位、2023年2位。インスティチューショナル・インベスター誌ストラテジストランキング2023年1位。著書に『アクティビストの衝撃』(中央経済社)、『良い株主 悪い株主』(日本経済新聞出版社)、『日本企業を強くするM&A戦略』『外国人投資家の視点』(PHP)『TOB・会社分割によるM&A戦略』『企業価値評価革命』(東洋経済)、訳書に『資本コストを活かす経営』(東洋経済)などがある。