エイチ・アイ・エス、九州の地元企業5社から株式を取得
2022年9月、エイチ・アイ・エス(HIS)が66.7%を出資するテーマパーク運営のハウステンボスの持株すべてをアジア系投資ファンドPAGに666億円で売却。九州電力や西部ガスホールディングスなどの九州の地元企業5社が保有する残り33.3%の株式はハウステンボスに売却された。買収総額は約1000億円。
ハウステンボスはオランダの街並みや港町を再現したテーマパークで、オランダ語で「森の家」を意味する。長崎オランダ村の社長だった神近義邦氏が中心となって、本物志向の長期滞在型リゾートを目指して1992年3月に開業した。大村湾北端に面した佐世保市針尾島の早岐瀬戸に接する部分に位置し、総開発面積は152ヘクタールで、テーマパークとしては日本最大級の敷地面積を誇る。
入場者数は当初、堅調に推移したものの、1996年度の380万人をピークに減少、2003年には
会社更生法の適用を申請した。その後、野村プリンシパル・ファイナンス(当時)が支援企業となり、2004年から新体制での経営再建がスタートした。しかし2008年のリーマン・ショックを機に野村プリンシパル・ファイナンスが撤退。2010年4月にHISが66.7%を出資、その際、九州電力など九州財界5社も33.3%の株式を取得して支援にあたった。新型コロナウイルス禍で入場者数が大幅に減少し、2020年9月期、2021年9月期はともに営業赤字に転落したが、21年10月~22年3月期には黒字に転換した。
ハウステンボスを買収したPAGの運用資産残高は2024年3月31日現在で550億米ドル超。PAGの日本における事業運営は、リアル・アセット部門の前身であるセキュアード・キャピタル・ジャパンが1997年に設立されたことに端を発する。現在は、ハウステンボスのような事業に投資するプライベート・エクイティ・ストラテジー、不動産や不動産関連の株式・債券に投資するリアル・アセット・ストラテジー、上場株からローンまで幅広く絶対収益型で投資するクレジット&マーケッツ・ストラテジーの3つの投資戦略を有している。日本企業への投資ではGYRO HOLDINGS、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)及びジョイソン・セイフティ・システムズ(旧タカタ)の実績を持つ。クレディ・スイス証券のマネージング・ディレクター兼日本の投資銀行本部長などを務めた伊藤宏一氏が2021年1月に入社、現在プライベート・エクイティの日本代表を務める。
ハウステンボス買収の経緯と成長戦略をPAG Japan橋本昭紀・マネージング・ディレクターに聞いた。
<インタビュー>
事業から生まれたキャッシュフローはすべて再投資
橋本 昭紀(PAG Japan マネージング・ディレクター)
- <目次>
- USJへの投資知見を活用
- 投資家から見たハウステンボスの魅力
- テーマパーク市場の現状と見通し
- 「刀」との戦略的パートナーシップ
- オペレーションチーム
- 数百億規模の追加投資を実行
- エグジット
- 4号ファンドの1号案件
USJへの投資知見を活用
―― 2022年の9月、PAGはハウステンボスの全株式をHIS等から約1000億円で取得しました。ハウステンボス買収の経緯についてお聞かせください。