[Webインタビュー]

(2015/06/17)

【第56回】【ドリームインキュベータ】ビジネスチャレンジャーへの支援を志して15年。「DIアジア産業ファンド」2号の立ち上げに込めたもの

 堀 紘一(代表取締役会長)
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日本経済への危機感


―― 2010年に、ベトナムに特化した50億円の「DIアジア産業ファンド」(以下「DIAIF」)を設立したのに続いて、この6月には、ベトナムだけではなくミャンマーを含めた東南アジア諸国、さらにインドに投資対象を拡大した2号ファンド(100億円)を立ち上げるということで、注目されています。堀会長がボストンコンサルティンググループ(BCG)の社長を退いてドリームインキュベータ(DI)を設立したのが2000年4月ですから、今年で15年になるわけですが、DIを立ち上げようと思われた背景にはどのような思いがあったのですか。

「米国はヤフーやグーグル、マイクロソフトなど独自のビジネスモデルでグローバルに活躍するベンチャー企業を輩出してきました。そうした企業家が米国経済の活力を生み出す源泉ともなってきたのです。翻って日本を見ると彼我の差は歴然としています。日本はまるでベンチャー不毛地帯で、こんなことでは日本はダメになるという思いがありました。

 そうはいっても、日本でも世界に冠たる企業家が生まれた時代がなかったわけではありません。2回あったのです。1回目が明治維新の頃です。西欧列強がアジアの植民地化を着々と進める中で、自立した日本を作らなければならないという緊張の中で、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一や三菱グループ創業者の岩崎弥太郎などが出てきました。2回目が太平洋戦争直後です。荒廃した日本の中からホンダやソニーという、日本を代表する世界企業が生まれました。世の中の価値観や制度が大きく転換する時期に優れたベンチャーが生まれたわけです。

 そして今、ITの登場によって世の中の価値観が大きく変わってきています。かつての大量生産大量消費の経済モデルが終焉し、“量"から“質"を重視する経済に移行しています。この中で、日本の大企業は結構逞しくて、例えば日本の近代化の礎となった富岡製糸場が世界遺産に登録されましたが、かつて官営で繭から糸をつむいでいた日本の繊維産業が、今では東レ、帝人、三菱レイヨンの日本企業3社が高機能な炭素繊維の生産技術を確立して、世界シェアの7割を占めて海外企業に大きく差を付けるまでになっています。そういう意味では、日本の企業は凄いのだけど、ただ残念なことに、放っておくと技術も、それから人材も知恵も、大企業にみんな行ってしまっている。ベンチャー企業が、時代の転換期にビジネスチャンスを掴まえることができていないのです。そんな日本の現状に危機感を持って、『ホンダやソニーを100社育てる』、『渋沢栄一、松下幸之助を100人育てる』という志を持って、私はDIを創業したわけです」

 

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