M&A専門誌マール

2015年2月特大号 244号 : マールインタビュー

No.174 クロスボーダーM&Aや税務実務の最前線に立つ 有料記事です

 大石 篤史(森・濱田松本法律事務所 弁護士)

大石 篤史(森・濱田松本法律事務所 弁護士)

目次

[1]クロスボーダーM&Aと税務

-- 最近は、どんなお仕事をされていますか。

「現在は、M&Aと税務を主に取り扱っています。割合としては、ちょうど50:50ぐらいでしょうか。M&Aについては、国内だけで完結するものも多数ありますが、最近はクロスボーダーの案件が、IN-OUT、OUT-INともに増えてきています。税務についてはM&A、グループ内再編、ファイナンス取引などのプランニングが多いのですが、税務調査対応、税務訴訟もたくさんやっています」

-- M&A案件で、先生の特徴は何ですか。

「他の弁護士と比べると、法務と税務が絡み合うような、複雑なプランニングが必要となる取引が多いかもしれません。特に、クロスボーダー案件は、国内で完結する案件と違って、日本の税務と法務だけでなく、相手国の税務と法務も絡んできます。中でも、取引の対価がキャッシュではなく、株式である場合は、法務・税務上の制約はかなり大きなものになります。案件をゴールに導くために、柔軟な発想力・創造性が求められることも多いです」

-- 株式対価のクロスボーダーM&Aとしては、DeNAによる米エヌジーモコの買収や、米アプライド・マテリアルズと東京エレクトロンの統合などがありますが、先生はこれらの案件にも関わっているそうでね。

「はい。そのような案件を想像していただくと、株式対価のクロスボーダーM&Aの難しさはイメージしやすいかもしれません。単純に考えると、案件ごとに無数のスキームがあるようにも見えますが、クライアントのビジネス上の要請、法務・税務上の制約などを考慮すると、実現可能なスキームが直ちに見当たらないこともありますし、スキームが見つかった場合であっても、針の穴に糸を通すような繊細なプランニング作業が求められることも多いです」

-- 実際のプランニングの場面では、具体的にどのような点が問題となりますか。

「主に問題となりやすいのは、各国の親会社株式取得規制、現物出資規制、組織再編税制を含むもろもろの税制などです。例えば親会社株式取得規制一つを取ってみても、三角合併・三角株式交換などを利用したクロスボーダーM&Aでは必ずといってよいほど問題となりますが、その解決にはそれなりの工夫を要することが多いです」

-- クロスボーダーの三角合併を実行できる国は、意外と少ないのではないかという指摘もあります。

「一昔前まで、日本の三角合併・三角株式交換を利用したクロスボーダーM&Aを行うことができる国・地域は、親会社株式取得規制のない米国のデラウェア州などに限定されていると考えられてきました。しかし、実はそうではなく、取引の順序などに工夫を加えることによって、親会社株式取得規制のある国との間でも、そのような取引を行うことができるということが分かってきました。これは、我々の業界にとっては、大きなブレイクスルーだと思っています。そのようなブレイクスルーを可能とするアイデアを見つけ出し、クライアントに喜ばれるのが何よりもうれしいです」

-- クロスボーダーM&Aといえば、米国でコーポレート・インバージョンが話題になっています。

「コーポレート・インバージョンは、タックス・インバージョンとも呼ばれるもので、一般的に株主構成を変えずに外国に親会社を設立することをいいます。クロスボーダーの組織再編には、子会社を通じて外国に進出するという形式と、親会社を通じて外国に進出するという形式とがありますが、コーポレート・インバージョンは後者に属するものといえます。コーポレート・インバージョンと同時に、人、知的財産権、商流などといった機能が外国親会社に移転されるケースも多いようです。その場合、結果的に所得が外国親会社に移転するため、外国親会社が、例えばアイルランドのような税率の低い国に置かれる場合は、企業グループ全体の実効税率が低くなるという効果があります。そのため、最近では批判的な目が向けられることも多くなってきました」

-- 米国ではどのような歴史があるのですか。

「コーポレート・インバージョンは、米国において十数年前から活発になったといわれています。米国では、米国法人の親会社をバミューダ諸島等のタックス・ヘイブンに置くなどといったスキームが数多く用いられてきました。米国では2004年までに、コーポレート・インバージョン対策税制として、キャピタルゲイン課税の繰延べを認めない制度や、コーポレート・インバージョンの後に外国の親会社を米国法人とみなして課税する制度などが導入されましたが、2014年に入って、それがさらに厳格化されてしまいました。そのため、米製薬大手のアッヴィは、2014年10月に同業のアイルランド法人であるシャイアーとの統合を撤回してしまいました」

-- 日本はどうなっていますか。

「日本でも、税率が20%以下の軽課税国に親会社を置く場合については、厳しい規制がかかっています。コーポレート・インバージョンが行われた後、将来にわたり親会社の所得をその株主の所得に合算するというタックス・ヘイブン対策税制と類似した制度もあります。また、外国に居住する株主に対しては、親会社に適用される税率に関係なく、広く課税するという別のルールも存在します」

-- 今後はどのような方向に向かうのでしょうか。

「今後、日本のコーポレート・インバージョン対策税制が、さらに厳しいものとなる可能性は否定できません。ただ、コーポレート・インバージョンを過度に制約する税制は、日本企業のグローバル市場における競争力を奪いかねませんし、経済的な効率性を高めるクロスボーダーのM&A取引を阻害する可能性もあるため、慎重な配慮を求めたいと思います。個人的には、日本企業の競争力が損なわれないよう、日本企業が国外に進出すること自体を阻害するという方向ではなく、その事業を日本に残すためのインセンティブを与えるという方向で、今後の税制が議論されることを望んでいます。具体的な方法としては、法人税率の引き下げのほか、特許権などから生じた所得に対し法人税の軽減を認めるパテントボックス税制の導入などが考えられます」

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