M&A専門誌マール

2013年8月号 226号 : マールインタビュー

No.159 『贈与と売買の混在する交換』の著者が語る中小企業M&Aの特徴 有料記事です

 古瀬 公博(武蔵大学 准教授)

古瀬公博(武蔵大学准教授)

「譲渡不可能性」という視点

-- 著書のなかで、中小企業は譲渡不可能性が強い財だと先生は仰っています。譲渡不可能性とはどういうことですか。

   「譲渡不可能性とは自分と所有物との間に強い関係があって、自分から切り離せない状態を示す概念です。英語ではinalienabilityと言います。人間から奪うことができない権利(不可譲の権利)という場合もこの言葉を使います。人類学の領域では、所有者とものとの間に密接な関係があって、所有権を他者に完全に譲渡するのが難しい状態を譲渡不可能性と言っています。未開社会では、ものに霊魂が込められていると信じられてきました。こうしたものを他者に譲渡する場合、売買でなく贈与で行われます。所有者にとって重要な存在であるものを売買の対象にすると、自分の尊厳を傷つけますし、ものの価値を貶めることになります。現代においても、個人にとって重要な意味を持つものは売買してはならないという価値観が存在します。家族が残した形見の品や人体の一部である血液や臓器もそうです。これら譲渡不可能な財の交換は贈与の形態で行われ、親族や友人など紐帯が強い相手との間で行われます。したがって、譲渡不可能性という言葉には贈与はできるけれど、売買の対象にはなりにくい、というニュアンスが込められています。しかし、このような譲渡不可能な財であっても市場経済が進展するなかで、売買の対象になる機会が増えてきています。その場合も、通常の市場取引とは異なる形で行われます」

-- 中小企業はどの点で譲渡不可能性が強いのですか。

   「中小企業はオーナー経営者が自ら設立し、数十年にわたり手塩にかけて育て上げた会社です。自分の存在そのもの、わが子のようになっていて、自分から切り離せません。この状態を理論的に表現するために、あえて譲渡不可能性という概念を使うことにしました」

-- このような性質が中小企業M&Aを特徴的なものにしているわけですか。

   「ええ、そうです。現在、オーナー経営者の方々の多くが後継者が見つからず、苦しんでいます。会社を清算するか、売却するか。清算すると、事業や雇用は維持されません。その点で経済厚生的には、別の会社に売却して事業と雇用を引き継ぐのが望ましいのですが、会社を売ることに対しては社会的なマイナスイメージもありますし、後ろめたさや葛藤が伴います。売ることへの抵抗感というのは、譲渡不可能な財の取引に共通する問題です。この観点から研究し、主にオーナー経営者の視点に立ちながら、取引のプロセスやメカニズムの特徴を解明することで、中小企業M&Aの円滑化に貢献できるのではと考えました」

-- どのような特徴が解明されたのですか。

   「中小企業のM&Aには贈与と売買の要素が混在しています。中小企業M&Aは、もちろん市場取引ではあるのですが、そこに贈与の要素を見ることができます。オーナー経営者の方々は『会社を売ること』に抵抗がありますので、より人格的な、より人間的な「贈与」の要素を加えることで、取引が円滑に進んでいきます。仲介会社の方々は『売る』という言葉よりも『譲る』という言葉を使われます。ここには通常の財の売り買いとは異なるものとして、中小企業M&Aを取り扱おうという配慮が見られます。オーナー経営者の方々が抱える『売る』ことへの葛藤に配慮しつつも、市場取引としての公正性を保つことに注意を払いながら、仲介会社の方々は取引を進めていると私は理解しています」

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