[寄稿]

2017年10月号 276号

(2017/09/15)

日本におけるドローン・ビジネスの進展と将来課題

 波多江 崇(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1 はじめに ドローン・ビジネスの現状

  ドローンとは、一般に、小型の無人航空機をいい、UAS(Unmanned Aircraft System)やUAV(Unmanned Aerial Vehicle)などとも呼ばれる。

  最も早くドローンの商業利用に着目したアマゾンは、ドローンを用いて、30分以内の配達を目指しているだけでなく、「ドローンハイウェイ」を提案するなど、ドローンを社会的なインフラとして活用する構想を早くから打ち出している。楽天も近時ドローン空域管制プラットフォームサービスをスタートさせるなど、積極的にドローン・ビジネスを展開している。建設業界での普及も進んでおり、カメラを用いた橋梁やパイプライン等のインフラ・巨大施設のメンテナンスのみならず、建設現場の進捗管理(測量、土量測定、出来高確認等)に既にドローンが活用されている。農業分野でもドローンの活躍する場面が広がっており、米国等では、ドローンによる農薬散布のみならず、赤外線等を利用したセンサーによるマッピングや種まき、作物のモニタリング等による生産管理・効率化が始まっている。危険を伴う施設や広大な土地の管理は、ドローンが活躍できる分野であるのは間違いない。防犯・監視・セキュリティ関連事業、物流・小売事業(屋内での在庫管理へのドローン活用も含む。)も有望視されるし、映画や映像制作、地図作成等の分野でも活用が拡大している。警察による捜査、被災地や過疎地での物資の輸送、広告、さらには光と音楽を用いたドローンエンターテイメントショーへの活用も日々実用化が進んでいる。

  ドローン・ビジネスへの投資も広がっている。先月には、ダイムラーほか複数社が、平成30年にも「ドローンタクシー」の開業を目指す中国のVolocopter社に3000万ドル(約33億円)を出資し、話題になった。海外では、さまざまな新しいサービスを提供する多数のドローン関連のスタートアップ企業が多額の資金調達を行っている。日本でも、本年6月に、20の個人投資家や企業が出資して15億円規模のドローンファンドが設立され、周辺事業を含め様々な事業に対して既に多くの投資が行われている。

  平成28年度の日本国内のドローン・ビジネスの市場規模は353億円とされ、平成27年度の175億円からほぼ倍増しており、平成34年度には2116億円(平成28年度の約6倍。サービス市場が1406億円、機体市場が441億円、周辺サービス市場が269億円)にまで達すると見込まれている(注1)。

  このように、ドローンは商用化のフェーズに入った。ハードウェアとしてのドローンの開発とともに、「どのようにドローンを活用するか」という勝負が始まったといえる。

  ドローンの開発自体は、軍事目的で第二次大戦中から始まっていたと言われており、その歴史は古い。現在の最も普及している形態であるマルチコプター型ドローンも、10年以上前から実用化の段階に入っていた。しかし、ドローン・ビジネスが進展を見せているのは、ドローンの使用に関するルールが具体化したここ3-4年である。各国の航空法等のルールが具体化し、できることとできないことの予測可能性が生じるとともに、リスク評価が可能になってきたからこそ、投資が促進されたとみることができるだろう。このような経緯からもわかるとおり、ドローン・ビジネスの発展は、規制やリスクの評価に左右される。ドローンに関する法的な規制とリスクについては、以下のとおり、取締法規と民事上のリスクに分けて整理できる。

2 取締法規

  ドローンに関する規制法令としては、主に、航空法、無人機規制法、電波法及び条例がある。

(1)航空法

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