[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2015/11/11)

ダイシン百貨店から学ぶ「情緒価値」

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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山奥の行列スーパー

 筆者は地元の岩手に帰省するたびに必ず訪れる食品スーパーがある。「山奥の行列スーパー」としてテレビでも紹介されたことのある人気店で、豊富で格安の食材を求めて県外からも客がやって来る。筆者が同店に寄る目的は食材ではなく「人」の観察にある。同店に入るとまず飛び込んでくるのが賑やかな声である。顧客同士が話している姿がフロアのあちこちでみられる。店員と顧客もよく話す。会話に耳をそばだてると、町内会の話や家族の話など、およそ目の前の商品とは関係ない内容で盛り上がっている。筆者は同店の売り場のような顧客の自然な笑顔を引き出す「空間」にローカルビジネスの原点をみる。その空間は単に商品を売り買いする場以上の価値を顧客にもたらしている。

 その一方、同店を訪れた後に必ず感じることがある。それは「この空間が生まれるのは住民同士のつながりが強い山奥のスーパーだからではないか」「地域コミュニティが失われつつある都会のスーパーでこの空間は生まれないのではないか」という疑念である。これをいい意味で裏切ってくれたのが、東京(大森)にある「ダイシン百貨店」である。

ダイシン百貨店の魅力

 ダイシン百貨店は「シニアの殿堂」とも言われように、シニアビジネスの成功実例としてメディア等でも取り上げられる。同社はバブル崩壊後に…


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

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