[M&A戦略と法務]

2017年5月号 271号

(2017/04/17)

医療法人のM&A手法の整理 ~第7次医療法改正の施行を踏まえ~

 鈴木 貴之(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

第1 はじめに

  医療法人は、病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として医療法の規定に基づき設立される法人であり、医療サービスの安定的な供給を確保するために昭和25年改正医療法で設けられた法人類型であるが、診療報酬のマイナス改定の傾向が続いており、平成28年度の診療報酬(全体)も8年ぶりにマイナス改定となるなど、医療法人を取り巻く環境は年々厳しさを増している。

  医療法人は、このような外部環境の悪化に加え、医療法人の代表者の平均年齢が年々上昇し、医療法人の事業承継が喫緊の課題となっていることや、病院の建て替えや大規模修繕の時期が迫っていること等にも対応しなければならず、これらの課題に対処するためには、(i)自らが運営している医療法人又は当該医療法人が運営している事業を売却するケースや、(ii)他の医療法人又は当該医療法人が運営している事業を買収するケースが増えている。

  このような状況を踏まえ、医療法も、第7次医療法改正(注1)において、医療法人のM&Aのための手段として新たに分割の制度を新設するなどして、医療法人のM&Aを推進・支援している。

  そこで、本稿では、医療法人のM&A手法として従前から認められていた、「法人格の承継」、「合併」及び「事業譲渡」の各種法の概要を整理するとともに、第7次医療法改正によって新たに導入された「分割」の手法の概要について整理する。

  なお、医療法人は、次表のとおり社団たる医療法人(以下「社団医療法人」という)と財団たる医療法人(以下「財団医療法人」という)に分類できるが(注2)、社団医療法人が全医療法人の約99.3%を占めており、財団医療法人は約0.7%に留まっていることから、本稿では社団医療法人を中心に整理することとする。

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