[【法務】事業承継M&Aの法務(ソシアス総合法律事務所 高橋聖弁護士)]

(2018/03/20)

第6回 事業承継M&Aに向けた株式の集約

 高橋 聖(ソシアス総合法律事務所 パートナー 弁護士)
  • 無料会員
  • A,B,C,EXコース

はじめに

  事業承継M&Aの対象会社の中でも、特に創業から長い年月が経過している会社においては、相続、退任・退職した役職員による株式の継続保有、取引先との付き合いなど、様々な理由から、対象会社の経営に関与せず、関心も有していないオーナー以外の株主が存在しているケースがしばしば見られます。

  このような場合、株式が分散していることが、M&Aの実行、あるいは実行後の対象会社の経営の弊害となることもあり得るため、対象会社の買収を検討する買手にとってのマイナス要因となり、ひいては事業承継の手段としてM&Aを活用することを妨げることにもなりかねません。

  本稿では、分散した株式をオーナー株主やその関係者である株主(オーナー・関係者株主)に集約し、対象会社を買手に売却しやすい状態とすることで、事業承継M&Aに備えておくための方法をいくつか紹介したいと思います。

株式の集約の必要性

  事業承継M&Aは、文字通り事業の承継を目的に行われるものですので、一般的には、買手は、対象会社の株式の100%(あるいは、譲渡実行後の共同出資を望むオーナー・関係者株主と共に100%)を取得することを企図します。たとえ少数であっても、買手と意思疎通が図れていない株主が残ってしまうと、譲渡実行後の対象会社の円滑・機動的な経営が阻害されるおそれがあり、また、買手が対象会社の経済的な企業価値の全部を取得できませんので、買手としては、このような状態は避けたいと思うのが通常でしょう。

  したがって、対象会社の株式が、オーナー・関係者株主以外の株主(集約対象株主)に分散している場合、買手は、①これら株主各自から個別に対象会社株式を取得するか、②オーナー・関係者株主に対象会社株式を買い集めさせた上で、オーナー・関係者株主からこれを取得することになります。多くの場合、買手は、条件の均一性を確保する、個別交渉に要する時間・手間を省く等の理由で、①の方法を選択せず、②の方法が取られることになりますが、オーナー・関係者株主と交渉し、合意した条件で、他の株主全員が株式の譲渡に応じるとは限りません。

  集約対象株主に株式が分散している会社については、上記のような問題が生じる可能性があることから、買手に対する魅力が下がることもあるでしょうし、上記のような問題がネックとなって買手が買収を断念するという事態も生じ得ます。

  そこで、このような会社のオーナー株主が近い将来M&Aによる事業承継を行うことも想定している場合、可能な限り、対象会社の株式をオーナー・関係者株主に集約し、買手への売却が円滑・迅速に行われるよう準備をしておくことが望ましいと考えられます。

株式の集約の方法

(1)相対での買取り

  集約対象株主から株式を集約する方法として、手続的に最も簡易なのは、各株主から個別に対象会社の株式を買い取る方法です。対象となる株主が少数である場合には、以下の(2)以降で紹介する手続を踏むよりも、個別に交渉を行った上で各株主から株式を買い取った方が、時間・労力・費用を費やさずに株式の集約を達成することができる場合が多いでしょう。

  しかし、この方法を取る場合、大前提として、集約対象株主が株式を売却する意思を持っていることが必要になります。また、集約対象株主が多数存在する場合には、個別に交渉を行うことで、かえって時間・労力・費用を要する結果になりかねません。

  さらに、各株主から株式を買い取る際の譲渡価格が集約対象株主ごとに異なったり…
 


■筆者略歴

高橋聖(たかはし・きよし)
1993年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社リクルート勤務を経て、1999年より弁護士としてTMI総合法律事務所にて、主にM&A、国際取引、一般企業法務等を取り扱う。2015年にソシアス総合法律事務所を開設し、現在は、事業承継案件を中心に、多数の非上場会社売却案件に売手・買手のリーガルアドバイザーとして関与している。
University of Virginia School of LawにてLL.M.(法学修士号)取得。第一東京弁護士会所属弁護士・米国ニューヨーク州弁護士。

 

 

続きをご覧いただくにはログインして下さい

この記事は、無料会員も含め、全コースでお読みいただけます。

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング