[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2017/02/09)

「Amazon GO」は日本の小売業界の脅威となるか

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
  • 無料会員
  • A,B,C,EXコース

Amazon GOが日本の小売を席巻!?

 アマゾンは昨年12月5日に、レジ清算のない新しいコンビニエンスストア「Amazon GO」を2017年から展開することを発表した。すでに米シアトルの初号店で社員向けに試験運営をはじめており、17年初頭に一般向けに開店する。AIを駆使した商品管理の自動化技術やネットで築いた配送網などを活用し、レジのない完全自動化されたシステムをリアル店舗に導入するという。

 当面は米国内での取り組みとなりそうだが、日本の小売業界の間では早くもAmazon GOに席巻されてしまうとの脅威論が散見される。果たしてAmazon GOは日本の小売業界にとって脅威となるのだろうか。

コンビニの約半分のプロセスで買い物が済む

 アマゾンのサイトに行くと、Amazon GOで買い物をする姿が動画で紹介されている。動画をみると、Amazon GOは「レジで決済しなくてすむ」といった次元を超えた買い物体験をもたらすものであることが分かる。

 Amazon GOでの買い物の流れは、「入店」⇒「商品選び」⇒「商品の袋入れ」⇒「出店」の4つのプロセスからなる。コンビニや食品スーパーでの買い物プロセスは7つであり、Amazon GOはこれまでの約半分のプロセスで買い物が済むことになる(図表1)。

 Amazon GOに入店する際はまず専用のアプリから発行されるバーコードをゲートにかざして個人認証を行う。入店後は棚から商品を取り出し、購入する場合は自分のバッグに入れる。商品を手に取った時点で買い物かごに入れたと認識されるが、棚に戻せばキャンセルとなる。必要な商品をバッグに入れてそのまま店から出ると自動精算され、代金はアマゾンに登録してあるカードから引き落とされ、レシートはメールで届くという仕組みである。入店時にスマホをかざすだけでまったくのストレスフリーな買い物体験ができる。

 こうした買い物体験を実現させているのが、コンピュータビジョン(画像認識)、複数のセンサー、ディープラーニングなどのAI技術である。顧客が棚から商品を出す瞬間、コンピュータビジョンや各種センサー(赤外線、圧力、重量、音声など)が商品、ユーザーの手などを認識し、そのデータがWiFiでデータセンターに送信され、ディープラーニングにかけて売れ筋予測や補充在庫数などが自動計算される。アマゾンはこれらを「Just Walk Out技術」と呼んでおり、自動運転車で用いている技術と同じものである。

図表1 Amazon GOと既存コンビニ・スーパーの買い物フロー



アマゾンはなぜ「食」と「リアル」の強化に動くのか

 世界のEC市場でアマゾンのシェアはアリババに次いで2番目である。日本でも楽天に次ぐ市場シェアを誇る。EC市場ですでに…



■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら

 

続きをご覧いただくにはログインして下さい

この記事は、無料会員も含め、全コースでお読みいただけます。

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング