M&A専門誌マール

2017年03月14日(火)

Webインタビュー

【第80回】英国のEU離脱、米トランプ政権誕生でグローバルM&Aはどう変わる

 ジョン・ドワイヤー(PwC ディールアドバイザリー部門 グローバルリーダー)

不確実性が高まる中で

―― 英国のメイ首相は1月17日、欧州連合(EU)からの離脱を巡り、EU単一市場から完全に離脱すると表明しました。3月末までに離脱を正式に通知する方針ですが、交渉は難航が必至と見られています。英国に対するM&Aなどの投資についてうかがいますが、その前に、米国ではトランプ政権がスタートして、こちらもグローバルな経済に大きな影響を与えることは必至と見られています。まず、トランプ政権の誕生についてどのように見ておられるか、この点から聞かせてください。

「今、私たちは異例な環境にいると思っています。特に欧州、米国においては、これまでにない政治的なリスクが持ち上がってきていることは誰もが認めるところでしょう。また、新興国、例えばインドや東南アジアなども、経済的な不安要素を抱えています。世界的に不透明感が増す中、今後、M&Aを含めた投資ビジネスにおいても、特に米国、欧州を中心に、不確実性が高まることは避けられないと言えるでしょう」

―― 投資ビジネスの今後の不確実性について、もう少し詳しく教えてください。

「米国を見てみますと、私どもの米国の大手クライアントあるいは大手企業の幹部の方々と話をしていて感じられることですが、現時点では新大統領の計画に対しポジティブ評価が聞こえてきます。トランプ大統領の下、経済政策としては規制の緩和が期待されていますし、インフラやエネルギー分野でも投資が増えていくだろう、そして企業の税率も低くなるだろうと見られています。これはディールのマーケットにとって強力な材料になると受け止められています。一方、まだトランプ政権はスタートしたばかりで政策自体も明らかでない部分が少なくありません。トランプ政権の体制が落ち着くまでは、政策面でどのような展開となるのか、見えていないところがあります。今後の展開を見据えなければいけないという意味では、不確実さを否定できません」

投資にとっての2つの問題点

―― 英国のEUからの離脱、いわゆる“Brexit"の表明は、日本でも驚きをもって受け止められました。その後、英国ではBrexitによって経済面でどのような影響が出るとみられているのでしょうか。

「今後Brexitによって状況が難しくなっていくだろうと見ています。移民制限や司法権独立など英国の権限回復を優先して、EUから完全に離脱すると表明したわけで、EUと英国の立場には非常に大きなギャップができていますから、さまざまなディールを進める上で環境としては不透明ということがいえると思います。メイ首相はEU基本条約(リスボン条約)50条が定める2年間の離脱交渉期限内に、EU側との合意をめざす考えを表明しています。英国がEUに離脱を正式に通告してから交渉が始まるわけですが、今年3月末までに通告すると2019年3月が交渉の期限になります。しかし、EUと英国の議会の承認手続きに半年程度はかかると見なければなりません。したがって、実質的な交渉期間は1年半ほどしかないと見るべきで、そうなると、EUとの最終合意の目標は18年10月ごろということになります。17年にはEUの中心国であるドイツとフランスでも総選挙が行われますから、EU側との合意がスムーズにいくかどうかは予断を許しません。

 そういう状況ですから、この期間にディールをまとめていくというのは大きなチャレンジとなる可能性があるでしょう。その要因としては二つあります。一つは資金の流動性の問題。いま一つは、ある程度合理的な確実性をもって経済や政治に予想を立てることが難しいという点が挙げられます。そのため、投資家の動きが鈍化するだろうとの見方が強くなっています」

英国のM&Aディールは増加

―― 日本の投資家や企業が英国から撤退するというよう動きは感じていらっしゃいますか。

「今のところ、私は投資家の方々が英国から出ていくというような状況は目にしておりません。実際に16年度第4四半期におきましては、英国のM&Aディールの案件数が…

 

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グローバル化 , 人(インタビュー) , M&Aプレイヤー , 池田耕造

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