[【企業価値評価】企業価値評価とコーポレートファイナンス(早稲田大学大学院 西山茂教授)]

(2016/02/17)

【第4回】最適資本構成

 西山 茂(早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授 公認会計士)
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 第3回では、投資家が期待している儲けである資本コスト(WACC)について学んできました。そこで取り上げたように、WACCは借りた資金のコストと株主から預かっている資金のコストの加重平均として計算されます。ただ、その2つのコストの水準には通常違いがあるので、借りた資金と株主から預かっている資金の構成比率次第で、加重平均として計算されるWACCの数値は変わってきます。このように、借りた資金と株主から預かっている資金の構成比率、つまり資金調達の構成比率のことを資本構成といいますが、これはコーポレートファイナンスの重要なポイントの1つです。今回はこの資本構成の最適なバランスを意味する最適資本構成を取り上げていきます。最適資本構成とは、それぞれの企業について最適と考えられる借入金・社債などの有利子負債と株主資本の金額の構成比率のことです。これについてはいくつかの考え方がありますが、今回はその代表的な考え方について学んでいきます。

1.伝統的な考え方:WACCが最も低くなる有利子負債と株主資本の構成比率

 最初は、WACCをもとした考え方です。ここで1つ質問があります。WACCは高い方がいいのでしょうか、あるいは低い方がいいのでしょうか。WACCが社内での投資のハードルレートの基準となることに注目すると、WACCが低くなりハードルレートが低くなることによって、同じ投資プロジェクトの儲けがハードルレートをより高く上回ることになるので、結果としてその投資プロジェクトの評価が高まることになります。さらにはハードルレートが低くなることによって、今までは却下すべきであったような投資プロジェクトも実行できるようになるため、ビジネスチャンスが広がることになります。このように、投資プロジェクトの評価という観点からは、WACCは低い方が望ましいと考えられます。

 それでは、WACCは低くすることができるのでしょうか。第3回で見てきたように・・・



■西山 茂(にしやま しげる)
早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルバニア大学ウォートン校よりMBA取得。早稲田大学より博士号取得。監査法人ト-マツ等にて会計監査、株式公開コンサルティング、M&A支援、人材育成などの業務に従事。
2002 年から早稲田大学で教鞭をとり、2006年から現職。会計や財務といった数字をベースに理論と実務の両面から経営を考える授業やゼミを担当している。国内主要企業の監査役を歴任。会計・財務に関する著書多数。公認会計士。

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