[【企業価値評価】財務分析入門(一橋大学大学院 円谷昭一准教授) ]

(2016/11/16)

【第3回】 効率性分析

 円谷 昭一(一橋大学大学院商学研究科 准教授)
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 本連載では、「財務分析入門」と題して7回にわたって連載します。第2回では安全性の分析方法を解説しました。第3回の今回は効率性の分析方法を紹介します。

「回転率」とは何か -総資産回転率-

 本連載の筆者の本業は大学教員です。もちろん大学にもコスト削減の圧力がかかっています。数多くの教室を効率的に使用しようとする意識はもちろんあります。たとえば、受講している学生がちょうど収まるような定員の教室をいかに用意するかも重要なコスト削減策です。大教室に少ない受講生ですと非効率です。なぜでしょうか。たとえば、教室に学生が1人だろうが、逆に満員だろうが同じ金額の電気代がかかります。教室に学生が1人だからといって電気や空調を切るわけにはいきません。

 企業も同様です。同じ個数の製品を作るのであれば、できるだけ少ない設備、小さい設備で作った方が効率的です。生産量ぎりぎりの設備能力では急な増産に応えられませんので多少の余力は残す必要がありますが、それが過度になると設備の稼働率が低下します。設備はたとえ稼働していなくても、持っているだけでコストがかかります(これを固定費と言います)。効率性分析では、設備などが効率的に使われているかどうかを明らかにしていきます。

 効率性の指標は「〇〇回転率」と呼ばれます。この意味は後ほど詳しく説明しますが、もっとも有名な指標が総資産回転率です。同じ売上高の2社があったとすると、より少ない資産で経営をしている企業の方が効率的です。総資産回転率は売上高を総資産で割ることによって計算されます。前回に続き、自動車メーカー3社の総資産回転率を比較します。なお、テキストによっては総資本回転率と説明している場合があります。投下している資本に対する効率性か、使用している資産に対する効率性か、という見方の違いによって指標の呼び方が異なります。ただし貸借対照表の総資産(借方)と総資本(貸方)の金額は一致しますので、用いる数字は基本的には同一です。
 




 回転率は…


 


■筆者プロフィール■
円谷 昭一(つむらや・しょういち)
一橋大学大学院 商学研究科 准教授。2001年一橋大学商学部卒業。06年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了、博士(商学)取得。埼玉大学経済学部准教授を経て、11年より現 職。経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ-企業と投資家の望ましい関係構築を考える-」委員、「企業会計とディスクロージャーの合理化に向 けた調査研究」委員などを歴任。日本IR協議会客員研究員。主な論文に「機関投資家ファンダメンタルズと株主総会投票行動の関連性(月刊資本市場2016 年9月)」、「IFRSの任意適用が経営者業績予想の精度に与える影響(會計2016年6月)」など。

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