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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2020年10月号 312号

(2020/09/15)

第158回 ポストコロナに向けた企業経営と税務

荒井 優美子(PwC税理士法人 タックス・ディレクター)
1. 新型コロナウイルスの企業業績への影響

 内閣府が8月17日に発表した4~6月期のGDP(速報値)は、前期比7.8%、年率換算で27.8%減少し、戦後最大の落ち込みを記録した(日本経済新聞 8月17日記事)。新型コロナウイルスの拡大防止に伴う経済活動の自粛で、企業の業績も2020年4~6月期決算では大幅な悪化が報じられた。日本経済新聞の調査結果では、内外の主要企業の4~6月期決算集計で、純利益は前年同期比65%減、最終損益は3社に1社が赤字で、リーマン・ショック時の2008年10~12月期(2社に1社が赤字)に次ぐ。パンデミック下では、移動の制限や接触の回避等の要請から、エネルギー、運輸、観光、娯楽、外食産業への影響が際立って大きいが、その一方で、ネット販売、情報通信、医療器具、製薬と言った業種の利益は急増している。このことは、リーマン・ショック時と異なり、パンデミック下の「新しい生活様式」が、業種により大きな業績格差をもたらしたということを物語る。

 上場企業の多くは2021年通期の業績予想を公表しているが、業種によっては未定としている企業も少なくない。経済活動再開後の内外での感染者の急増の報道に、感染第2波への経営者の危機感も高まっている。日本経済新聞社による国内主要企業の社長を対象とするアンケート(注1)によると、自社の事業環境が新型コロナウイルス前の水準に回復するまでの期間について、1年以内とする回答者は44.2%で、2年(38%)又は3年以上(17.8%)と考える回答者数の合計を下回る。

 日本国内の新規感染者数は、8月上旬以後はやや減少に転じているとは言え、未だに4月のピーク時を上回るレベルにある。感染再拡大に対する懸念の高まりから、V字回復の期待は薄れ、GDPが直近のピークである2019年7~9月期の水準を回復するのは2024年ごろとの見方が、民間エコノミストの間でも広がりつつある(日本経済新聞 8月18日記事)。

 同アンケートによると、感染第2波への企業側の備えについては「テレワークがしやすい体制づくり」(87.6%)、「サプライチェーンの見直し」(42.1%)、「キャッシュの積み増し」(33.1%)が挙げられおり、事業環境の整備や生産体制の見直しが今後の課題であると考えられているようである。

 なお、サプライチェーンの見直しに係る具体的な対応としては、野村総合研究所の調査報告(注2)では、業務の標準化・効率化(39.5%)、部品等の購入先の分散化・複数化(22.6%)、部品等の共通化・標準化(21.8%)、製品の設計開発におけるデジタル化(10.5%)、業務のアウトソーシング(3.2%)が今後の課題と認識されている。


2. ウィズコロナにおける企業の取組

 当面は、ウイルスとの共存を前提に経済活動を行うとの認識のもと、企業の取り組みとして、経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)は、2020年7月16日に「新型コロナウイルス感染症と両立する経済活動の再加速に向けて」と題する政策提言(以下、「政策提言」)を公表した。これは、既に経験した新型コロナウイルスによる経済への影響の深刻さに鑑み、仮に感染第2波の発生により外出自粛等が再度要請される事態となれば、わが国経済は致命的な損害を被ることとなり、そうした事態の回避のためにも、感染拡大防止と経済活動の両立に万全を期すとともに、事態悪化時にも耐えうる体制を整える必要がある、との強い危機感から提言として公表されたものと思われる。

 政策提言では、(1)感染拡大防止に向けた体制整備(①医療提供体制の整備、②医療物資供給の確保、③検査体制の拡充、④国境を越えた人の往来への対応(経済界の活動としては、グローバルな経済活動再開に向け、社内診療所の活用等も含め協力すること)、⑤緊急事態における司令塔機能強化、⑥ワクチン・治療薬の早期開発)、(2)サプライチェーンの強靭化とBCPの強化(経済界の活動としては、サプライチェーンの多元化・強靭化検討、今般のパンデミックを踏まえ、複合災害の発生も念頭にBCPを再検討すること)、(3)社会全体におけるデジタル化の推進(柔軟な労働時間管理、メンバーシップ型・ジョブ型雇用の最適な組合せ、採用、教育・人材育成のあり方等の検討・発信を継続)等の対応を、国・自治体への要望、経済界自身のアクション、官民共同での取り組み、政府への要望として表明している。以上の項目は、骨太方針2020の内容にも反映されており、今後の税制改正要望等を通じて、より具体的な税制措置(令和3年度税制改正等)のたたき台として改正への議論が進められるものと考えられる。

 なお、経団連が3月30日に公表した、「新型コロナウイルス対策に関する緊急提言」の具体的措置要望は、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策 ~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」(2020年4月20日閣議決定)に織り込まれ、関連税制措置(新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律、地方税法等の一部を改正する法律)の立法化に至っている。

 政策提言における、経済界自身のアクションは、企業の事業運営においては現状のビジネスモデルを所与としたものと考えられるが、よりダイナミックにビジネスモデルの変革を促す提言も見られる。


3. ポストコロナの成長戦略

 我が国の成長戦略の企画及び立案を担う日本経済再生本部の下で、「未来への投資」の拡大に向けた成長戦略と構造改革の加速化について審議される「未来投資会議」でも、新型コロナウイルス感染症に関する対策の議論が4月以後行われている。6月16日の会議では、今後のウィズコロナ、ポストコロナ時代の成長戦略の立案に向けた方向性が議論され、今後の課題とされる項目ごとに民間議員からの意見の整理が行われた(図表2参照)。

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