[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2023年7月号 345号

(2023/06/09)

ふくおかFG、萬坊とJR九州のM&Aなど注目案件でも存在感

~FFGサクセション設立から1年、新体制での業務が軌道に

  • A,B,EXコース
ふくおかFG

FFG傘下の福岡銀行産業金融部とFFGサクセションのメンバー

FFGの組織体制の全体像と特徴

 銀行持株会社のふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG。傘下に福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行、みんなの銀行)は、福岡県、熊本県、長崎県の九州北部3県を営業基盤とする。FFG傘下にはグループ銀行4行のほか、戦略子会社10社がある。

 M&A・事業承継関連業務は、FFG傘下の福岡銀行の産業金融部M&Aグループ、十八親和銀行(長崎市)のソリューション営業部M&A・事業承継グループ、熊本銀行のソリューション営業部M&A・事業承継グループが担当する。加えて、2022年4月に独立系M&Aアドバイザリー、フーリハン・ローキーの子会社で、日本の中堅・中小企業の事業承継を中心としたM&Aのアドバイスを行う「HLサクセション」(二戸弘幸社長)と包括提携して設立した新会社「FFGサクセション」(福岡市南区)がそれぞれ連携し、M&A・事業承継業務に取り組んでいる(図表1)。

(図表1)FFGのM&A・事業承継の推進体制

(出所)FFG(図表2、3、4も同じ)

 銀行持株会社全体での2022年3月末時点のM&A・事業承継の担当者数は現在41人であり、5年前の30人から11人増の充実した体制となった(図表2)。

(図表2)担当者数の推移
 体制面での他行との大きな違いは、M&A助言のフーリハン・ローキー傘下のHLサクセションと包括提携をし、FFGサクセションを設立している点が挙げられる。地元企業に対して能動的に事業承継・M&Aに関する提案活動を行っていく組織として2022年4月に設立されたFFGサクセションには現在、フーリハン・ローキーからの出向者が1人在籍している。

 フーリハン・ローキーは福岡事務所をFFGサクセション所在地に移転させて連携しており、フーリハン・ローキーのネットワークや提案ノウハウを活用している。FFGサクセション設立に合わせて、福岡銀行のM&A業務を担当していた過半の行員を出向させ営業を行う一方で、引き続き銀行側のM&Aグループにおいても、銀行の取引先を中心とした顧客からの案件対応を行っている。

 FFGの事業承継・M&A関連業務は、売り手と買い手双方の話をまとめる「M&A仲介業務」、売主側もしくは買主側片方の契約相手方の利益最大化を目指す「FA型」、両方に対応している。フーリハンと包括提携したことで誤解を招きがちだが、「FFGはFA業務に比重を置いている」というわけではない。

営業推進体制の特色

 銀行の現在の営業推進体制は、他行比で大きく異なるわけではない。FFG傘下3行の各営業店、さらに本部の「ソリューション営業部」が、早期の段階から事業承継・M&Aの相談を受け付けている。各行のソリューション営業部に事業承継の「一次窓口」が設置されており、顧客の事業承継方針が未定あるいはこれから検討する顧客に対して、方針策定のサポートや提案活動をしている。

 そこで顧客ニーズが見込めれば、事業承継・M&Aのアドバイザリー業務、コンサル業務を執行する部署(産業金融部、FFGサクセション、各行ソリューション営業部内の専門チーム等)に繋ぐ、という業務フローだ。

 現在、FFGが力を入れているのが、これまで接点がなかった先への新規提案や、事業承継がまだ顕在化していないが、将来的にはニーズがある潜在顧客層への提案活動だ。FFGは、メインバンク取引社数が約4万社と地銀でトップ。M&Aや事業承継を考える取引先はこの数年で顕著に増えており、FFGサクセションがHLサクセションと連携して、共同でロングリストを作成して、業界動向分析やニーズが見込める企業を探し、営業活動を日々行っている。現時点ではニーズが顕在化していない場合も、業界動向や個社の成長戦略や経営課題、後継者の状況を顧客と一緒に議論した上で、M&Aや資本提携が顧客の有する課題の解決策となると考えられる場合には、FFGサクセションが積極的にM&A・資本提携を提案するなどしている。

 この間、FFGグループ各社の契約数は堅調に推移している。具体的には、2018年度にFFG全体で69件だったのが、19年度に85件に増えた(図表3)。コロナ禍の2020年度に62件に落ち込んだが、その後増加に転じて、2021年度に79件、2022年度に99件と順調に推移している。

 なかでも、件数ベースで伸びが大きいのが、第二地銀の熊本銀行で、小規模案件が中心となっているが、着実に契約数は伸びている。また、十八親和銀行(長崎市)は、十八銀行と親和銀行の合併によって、長崎県内取引シェアが増えた効果が出ている。さらに合併から一定期間が経過して行内体制が整ったことで、長崎県内の事業者のニーズが把握しやすくなっているようだ。

(図表3)FFG全体でのM&A・事業承継コンサルティング「契約件数」の5年間の推移
収益面では大きな伸びしろ

 

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

関連記事

バックナンバー

おすすめ記事

アクセスランキング