[M&Aトピックス]

(2022/01/28)

公取委がIPO実務の調査報告書を発表~証券会社のIPO実務慣行の改善点を指摘~


 公正取引委員会は1月28日、2021年6月に政府が成長戦略として示していた証券業界の新規株式公開(IPO)実務の見直しの必要性に関連し、その調査結果及び競争政策上問題が認められる点について、考え方をまとめた(図表)。



 公取委は21年以降、過去1年間においてIPOを行った企業75社と、直近のIPO案件で主幹事を務めた実績のある証券会社22社を、書面にて調査した。加えて、企業15社、証券会社9社、東京証券取引所にヒアリング調査も行った。これらの結果、IPOを目指す新規上場企業の状況、IPOに関する各証券会社の取引慣行の実態が分かった。

 公取委の調べによれば、IPO時の公募等の実務では、全ての案件においてブックビルディング方式が採用されている。IPO時の各プロセス(プレヒアリング、ロードショー、ブックビルディング)の一部の実務について、公取委は見直すべき課題があるとの認識を示した。

 新規上場会社からの書面調査やヒアリングの結果からは、機関投資家へのロードショーが形式的なものに留まっていたり、仮条件価格帯の幅の大きさに関して「基準が存在するとの説明を受けた」とする新規上場会社がなかった、といった問題が認められた。ロードショーにおいて、共同主幹事証券会社を追加したかった回答企業のうち、追加できなかった会社が33.3%にも上った。

 これらの点について公取委は、証券会社はIPOプロセスの早期の段階から新規上場会社との間で将来設定する公開価格の水準について協議を行い、当該上場会社に必要な資料を提供するなど、「新規上場会社が十分に納得した上でIPOプロセスを進めることが、競争政策上望ましい」と指摘した。

 公取委は今後,IPOに関連する取引において,独占禁止法上問題となる具体的な案件が認められた場合、「厳正・的確に対処する」とした。さらに、競争政策上の課題が解消された結果、「新規上場会社の選択肢が多様化し、自らの事業を成長させていくために必要な資金が調達しやすくなり、市場における成長を促進する環境が整う」よう、証券界に改善を促している。

 公取委は、この報告書で示した考え方を金融庁、日本証券業協会、東証に申し入れる。日証協は21年9月、市場関係者や学識経験者らで構成する作業部会「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」を立ち上げており、現在、IPOに関する実務指針等の見直しを検討しているが、取りまとめは当初想定よりも遅れている。日証協は2月にも、今回の公取委の指摘を受けて、IPOに関連する実務指針の見直しの方策を公表する見込み。

 このほど公取委が示した報告書全文は以下の通り。

公正取引委員会
「新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング