金融庁は2023年3月2日に金融審議会の総会を開催し、
公開買付制度や大量保有報告制度の改正に向けた検討を開始することを決定した。ワーキンググループ(WG)の座長には、神田秀樹学習院大学大学院教授が就き、WGの名称や委員の構成は今後議論した上で決定する。日本の公開買付制度は1971年に、大量保有報告制度は1990年にそれぞれ導入されたが、2006年以降、15年以上にわたり大きな改正がなされていない。
公開買付制度には、3分の1超の株券等を取得する場合には、少数の買付であっても公開買付によらなければならないとする「3分の1のルール」がある。ただし、現行制度では市場外取引のみをTOBの適用対象としているほか、「全部買付義務」を課していない。市場内取引(市場買い上がり)についてもTOBの対象にすべきとの意見などが出ており、具体的な議論を通じて、制度設計の在り方を検討する。
大量保有報告制度については、企業の買収者が期限通りに
大量保有報告書を提出しないケースがあるなど、エンフォースメント上の課題があるとの指摘がある。どのような制度設計をすれば実効性が高まるのか、大量保有報告制度における特例報告制度の適用要件の明確化を検討する。
加えて、実質株主の透明性の問題についても議論する。日本企業の株主は、誰が実質的株主なのかが公開情報からは明確でなく、企業経営上の課題であるとの指摘がなされている。海外では実質的な株主を把握できる仕組みを設けている国もあることから、海外事例などを研究しながら、当該企業の株式を誰が保有しているのかが分かりやすくなるような制度の導入を検討する。