[M&Aトピックス]

(2023/03/30)

PwCアドバイザリーが「世界のM&A 業界別動向 2023年見通し」の日本語版を公表 ~2023年は、M&Aにとって活気に満ちた時期になると予想~

 PwCアドバイザリーは3月28日、PwC米国が取りまとめた「世界のM&A 業界別動向 2023年見通し」の日本語訳版を公表した。同レポートは半期に一度、Refinitiv社より提供されたデータを基に世界のM&A動向について分析し、今後予想されるシナリオについてPwCの見解をまとめた内容となっている。

 同レポートによると、2022年の世界のM&Aの件数と金額は、2021年の過去最高水準からそれぞれ17%と37%減少したものの、どちらも2020年および新型コロナのパンデミック前の水準を引き続き上回った。

 地域別では、アジア太平洋のディール件数と金額は、2021年から2022年にかけてそれぞれ23%と33%減少。最も大きく減少したのは中国で、同国のパンデミックに関連した課題と輸出需要の減少に対応して中国国内で鈍化。

 米州のディール件数と金額は、マクロ経済、規制および地政学的な要因が相まって、2021年から2022年にかけてそれぞれ17%と40%減少した。ディール金額は特に大きく減少し、米国のメガディール(取引額が50億米ドルを超える案件)の件数は、2021年から2022年にかけて81件から42件へとほぼ半減した。

 欧州・中東・アフリカのディール件数と金額は、エネルギーコストの上昇と投資家の信頼感低下が市場に影響を与え、2021年から2022年にかけてそれぞれ12%と37%減少したが、概ねアジア太平洋および米州よりも減少率は低く収まった。

 また、PwCの第26回世界CEO意識調査の結果では、世界の経済成長について悲観的である一方、CEOは成長の必要性に加え、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)やESG重視の変革を加速する手段として、引き続きM&Aに目を向けている。このため、2023年のM&Aの見通しとしては、変革とディールがCEOの価値創造戦略の前面に押し出され 、M&Aにとって活気に満ちた時期になると予想している。

 なお、各業界の2023年M&A動向見通しについての主なコメントは以下のとおり。

【金融サービス】2023年の金融サービスにおけるM&Aでは、ESG、ポートフォリオの最適化、デジタル化が引き続き戦略的な優先事項となると予想。

【ヘルスケア】2022年はM&A活動にとって厳しい1年となったが、2023年にはディール組成が従来の水準まで回復すると予想。

【産業機械・自動車】DXを加速させるために資産を売却するというトレンドが強まると予想。また、現在の経済的逆風が2023年まで続く場合は、事業再生M&Aが増加する可能性がある。

【テクノロジー・メディア・情報通信】資金調達コストが上昇する環境下では、豊富なキャッシュを有する企業や投資家は、今後数カ月間のうちに資産価格低下のメリット(バリュエーション低下)を活かす可能性がある。特に米ドル建てバランスシートの投資家の間では、非公開化取引がさらに進むと思われる。

【エネルギー・ユーティリティ・資源(EU&R)】エネルギー、再生可能エネルギー、重要鉱物の供給の確保への注目が高まっており、これがEU&R分野および工業関連企業の経営陣にとってM&Aを推進する大きな要因になると考えられる。

【消費財・小売】新型コロナのパンデミック下で加速した消費者トレンドに適応するために、ポートフォリオの改善に引き続き注力すると予想される。危機からの回復や新たな働き方・生活様式への適応がディール活動を活発にすると予想。

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