- <目次>
- オアシスがNECによるNECネッツエスアイの完全子会社化に介入
- オアシスは「より強い花王」を提案
- オアシスの投資先のDICでは美術館閉鎖に賛否
- アクティビストが投資する化学会社
- エフィッシモキャピタルとオアシスが日産自動車に投資
- パリサーが株主提案を行った京成電鉄には旧村上ファンド系も参戦か?
- 旧村上ファンド系の銀行株への投資
- エリオットが東京ガスに新規投資
- 富士ソフトを巡るKKRとベインキャピタルの争奪戦
- 3Dが大量保有する西武HDは保有不動産を売却
- 日本は株主権が強すぎる?
オアシスがNECによるNECネッツエスアイの完全子会社化に介入 オアシスは2024年10月、NECによるNECネッツエスアイの
完全子会社化に介入した。NECのNECネッツエスアイの買収株価は、発表日前日の株価に+21%のプレミアムを付けた3250円であり、2024年10月30日に同株価に収束した。
TOBでは通常プレミアムは+30%以上付けられることが多い中、NECネッツエスアイに対するプレミアムが+21%と低かったためか、2024年11月オアシスが重要提案行為を目的に6%で
大量保有報告書を提出したことが判明し、同年12月に保有比率を13.1%に引き上げた。親子上場の解消は予想するのが難しい。
NECは
TOB開始のお知らせの中で「NECネッツエスアイの2024年9月末の
PBRは約2.6倍だった。経産省の『公正なM&Aの在り方に関する指針』によると、上場子会社に対するTOB及び
MBO案件のうち対象会社のPBRが2倍超の事案16件のうち、過去1カ月~半年平均の株価に対するプレミアムは20~30%が最頻値だった」とTOB価格を正当化した。
スクイーズアウトで完全子会社化を目指すNECのNECネッツエスアイの直接的な保有比率は38.5%だったが、退職給付信託を通じた間接保有分12.9%を足すと、51.4%に達した。NECがTOBによる買付予定数の下限を15.3%に設定したのは、株主総会の特別決議に必要な3分の2以上の保有を目指すためだ。オアシスの介入を受けて、NECは2024年12月20日に買付予定数の下限を6.8%に変更するとともに、TOB価格を3300円に引き上げた。NECはTOBで全株式を取得できなかった場合は、スクイーズアウトの手続きを取るとしている。
オアシスは「より強い花王」を提案 最近、オアシスによる化学会社への投資が目立っている。オアシスは2024年12月に花王に対して大量保有報告書を提出した。オアシスは花王の株主総会後の2024年4月に「
より強い花王」(96ページ)とのホワイトペーパーを出しており、当時花王の株式を3%以上保有していると述べていたので、このタイミングでの大量保有報告書の提出は遅く感じられた。同ペーパーで、オアシスは2021年6月から花王と非公開の対話を行っており、2023年9月以降、エンゲージメントをより強化させていると記載した。また、オアシスは22年間にわたり、投資先企業の変革を支援した実績があると述べた。
オアシスは花王の問題点として、
■筆者プロフィール■

菊地 正俊(きくち・まさとし)
1986年東京大学農学部卒業後、大和証券入社。大和総研、2000年にメリルリンチ日本証券を経て、2012年より現職。1991年米国コーネル大学よりMBA。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト。日経ヴェリタス・ストラテジストランキング2017~2020年1位、2023年2位。インスティチューショナル・インベスター誌ストラテジストランキング2023年1位。著書に『アクティビストの衝撃』(中央経済社)、『良い株主 悪い株主』(日本経済新聞出版社)、『日本企業を強くするM&A戦略』『外国人投資家の視点』(PHP)『TOB・会社分割によるM&A戦略』『企業価値評価革命』(東洋経済)、訳書に『資本コストを活かす経営』(東洋経済)などがある。