[視点]

2022年3月号 329号

(2022/02/09)

株式合資会社制度の今日的意義 ―― 近時のフランスの事例から ――

石川 真衣(公益財団法人日本証券経済研究所 研究員)
  • A,B,EXコース
 株式合資会社は、わが国において現在は存在しない会社形態である。現在は、と書くのは、かつて――明治32年商法により導入され、昭和25年の商法改正により廃止されるまで――株式合資会社はわが国にも制度上存在していたからである。導入された実質的な理由は、合資会社の有限責任社員が感じる持分処分の不便性への対処であるとされ、昭和13年改正時にもこれを廃止すべき積極的な理由がないとされたが(注1)、その組織が二元的で運用上多くの不便と複雑な問題を伴うため実際上あまり利用されず(昭和24年時点で全国でも100に満たない状況にあった)、昭和25年改正により廃止された(注2)。しかし、この制度が他国においてもわが国と同様の理由で廃止されたかというと、必ずしもそうではない。ドイツとフランスにおいて、株式合資会社制度はいまも維持されており、数は多くないものの、株式合資会社のなかには上場するものもある。ユーロネクスト・パリの株価指標であるCAC40に属するタイヤメーカー・ミシュラン社(Compagnie Générale des Établissements Michelin)、及び有名ブランド・エルメスを展開するエルメス・アンテルナショナル社(Hermès International)は、フランスの株式合資会社(société en commandite par actions)の代表例とされる。このような株式合資会社は、一般的に経営権維持を欲する場合に適した会社形態であるとされ(注3)、実際、前に挙げた二つの会社も、同族経営の会社として出発したものである。

 株式合資会社の法的構造は、

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